「有効煙突高さ」って、実際の煙突の高さと何が違うの?なぜ煙突は高い方が良いの?と迷いませんか。煙が空でどう広がり、地上の濃度がどう決まるのかを、やさしく整理します。
この記事の要点
有効煙突高さとは、実際の煙突の高さに、出た排ガスがさらに上昇する高さ(上昇高さ)を足した、煙が事実上立ちのぼる高さのことです。
覚えるポイントは次の3つです。
工場や発電所の煙突から出る煙は、空にのぼりながら風で流され、横にも広がっていきます。
その煙が、地上ではどのくらいの濃さになるのか。これを考えるのが大気拡散です。
このとき出発点になるのが「有効煙突高さ」です。まずここから整理します。
有効煙突高さとは、実際の煙突の高さに、排ガス自身が上にあがる分(上昇高さ)を足した高さのことです。
煙突から出た排ガスは、出口の高さでとどまらず、さらに上へのぼっていきます。
のぼる理由は2つあります。
1つ目は運動量です。排ガスは煙突から勢いよく上向きに吹き出すため、その勢いでしばらく上昇します。
2つ目は浮力です。排ガスは周りの空気より高温で軽いため、温かい空気が上にのぼるのと同じ理屈で浮き上がります。
この2つでのぼった分が上昇高さです。煙が実際にたなびき始める高さは、煙突の物理的な高さよりもこの上昇高さの分だけ高くなります。
そこで、煙突の高さと上昇高さを合わせた高さを、煙の出どころとみなします。これが有効煙突高さ(He)です。
有効煙突高さ He = 実際の煙突高さ + 排ガスの上昇高さ。煙は出口より高い位置からたなびき始める。
煙突を高くしたり、有効煙突高さを高くしたりすると、地上の濃度はどうなるのでしょうか。
煙は高い位置から出るほど、地上にたどり着くまでに長い距離を流され、その間に広く薄まります。
その結果、地上で煙がいちばん濃くなる地点の濃度(これを最大着地濃度といいます)が下がります。
有効煙突高さが高いほど、地上の最大着地濃度は低くなります。これが、煙突を高くする基本的な理由です。
逆に言うと、煙突が低かったり、排ガスがあまり上昇しなかったりすると、煙が薄まりきらないうちに地上に届き、近くの地表で濃度が高くなりやすくなります。
同じ量の煙でも、高いところから出すほど地面に届くまでに広がって薄まる、というのが核心です。だから「上昇高さも込みでどれだけ高い位置から出るか」=有効煙突高さが効いてきます。
有効煙突高さの位置から出た煙は、風下に流されながら、上下方向にも横方向にも広がっていきます。この広がりが大気拡散です。
煙の広がり方には特徴があります。煙の断面を見ると、中心軸がいちばん濃く、外側に行くほど薄くなる、なだらかな釣鐘のような形(正規分布の形)になります。
この釣鐘型(正規分布型)の広がりを前提にした考え方が、ガウス型(正規形)プルームモデルです。プルームとは、たなびく煙の流れのことです。
風下に進むほど煙の広がりの幅は大きくなり、そのぶん中心の濃度は薄まっていきます。
煙は風下に進むほど広がり、断面の濃度は中心が濃く外側ほど薄い釣鐘型(正規分布型)になる。
有効煙突高さの考え方は「煙がきれいに上昇して、風下に広がる」のが前提です。ところが、それを乱す現象があります。
その代表がダウンウォッシュです。
ダウンウォッシュとは、建屋や煙突自身のすぐ風下にできる空気の渦に、出たばかりの煙が引き込まれて下に巻き込まれる現象です。
風が建物や煙突にぶつかると、その裏側(風下)に渦ができます。煙の勢い(上昇)より風が強いと、煙がこの渦に取り込まれ、上にのぼらずに引き下ろされてしまいます。
こうなると、せっかくの有効煙突高さがいかされず、煙突の近くの地表で濃度が高くなってしまいます。
ダウンウォッシュを避けるには、煙突を周りの建物より十分高くする、排ガスの吹き出しの勢い(速度)を確保して上昇させる、といった対策がとられます。
大規模大気特論は、大きな工場・発電所のばい煙が、周辺の地上にどれだけの濃度をもたらすかを扱う科目です。
その中心が、ここで見た有効煙突高さと大気拡散です。
具体的には、有効煙突高さや風速、煙の広がりの幅(拡散幅)を使って、風下の地上濃度を求める正規形プルーム拡散式が登場します。
また、煙の広がりの幅は、煙を平均してとらえる時間(平均化時間)によって変わること、安定した大気か乱れた大気か(乱流拡散)によっても変わることなど、拡散の条件を問う出題があります。
細かい数値計算は科目本番で扱いますが、まずは「有効煙突高さが高い→地上の最大着地濃度は低い」「煙はガウス型に広がる」という定性的な関係を押さえておくと、式の意味が読み取りやすくなります。
有効煙突高さは、実際の煙突の高さに何を足したものか。
答え:排ガスの上昇高さ
煙突から出た排ガスは、勢い(運動量)と、周りより高温で軽いこと(浮力)によって、出口よりさらに上昇します。その上昇高さを煙突高さに足したものが有効煙突高さです。
有効煙突高さが高くなると、地上の最大着地濃度は高くなるか、低くなるか。
答え:低くなる
高い位置から出るほど、地上に届くまでに長い距離を流されて広く薄まるためです。煙突を高くする基本的なねらいは、この最大着地濃度を下げることにあります。
建屋や煙突のすぐ風下にできる渦に煙が引き込まれ、煙突の近くで地表濃度が上がる現象を何というか。
答え:ダウンウォッシュ
風が建物や煙突にぶつかってできる風下の渦に煙が巻き込まれ、上昇せずに引き下ろされる現象です。煙突を周りより十分高くする、吹き出し速度を確保するなどで防ぎます。
有効煙突高さは、実際の煙突高さに排ガスの上昇高さ(運動量と浮力でのぼる分)を足した高さです。
有効煙突高さが高いほど、煙は地上に届くまでに広く薄まり、最大着地濃度は低くなります。煙は風下にガウス型(中心が濃く外側ほど薄い)に広がります。
ただし、ダウンウォッシュで煙が引き込まれると、近くの地表で濃度が上がってしまう点には注意が必要です。
参考
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
有効煙突高さと最大着地濃度の向きを逆にした記述が狙われます。
有効煙突高さが高い→地上の最大着地濃度は低い、煙はガウス型に広がる、という定性的な関係を取り違えないようにします。