環境基本法の「基本理念」と「基本的施策」、どこからどこまでが何の話なのかで混乱しませんか。法律の組み立てと、試験で狙われる第14条の3つの確保事項を整理します。
この記事の要点
環境基本法は、日本の環境保全の土台となる法律で、まず基本理念を示し、その理念を実現するための基本的施策を定める、という順で組み立てられています。
試験でとくに狙われるのが、基本的施策の指針を定めた第14条です。第14条は、施策の策定・実施が次の3つの確保を旨とすることを定めています。
公害防止管理者の公害総論では、各公害法(大気汚染防止法・水質汚濁防止法など)の前に、それらの大もとである環境基本法が問われます。
その環境基本法は、「考え方(理念)」と「具体的な手立て(施策)」が層になっていて、どこの話をしているのか見失いやすい法律です。
まず法律全体の組み立てをそろえてから、試験で問われる第14条の中身を見ていきます。
環境基本法とは、環境の保全について、基本理念と施策の基本となる事項を定めた、日本の環境政策の土台となる法律です。
平成5年(1993年)に制定された法律で、それまでの公害対策基本法に代わって、公害だけでなく自然環境の保全まで含めた幅広い「環境の保全」の枠組みを示しました。
この法律は、個別の規制値(排出基準など)を直接決める法律ではありません。
規制の細かいルールは、大気汚染防止法や水質汚濁防止法といった個別法が受け持ちます。
環境基本法は、それらの個別法が目指すべき方向と、共通のしくみ(環境基準など)を示す「親」のような役割を担います。
環境基本法は、おおまかに次の順で並んでいます。
まず冒頭で、この法律が何のためにあるか(目的)を述べます。
続いて、環境保全の根っこにある考え方(基本理念)を示します。
そのうえで、国・地方公共団体・事業者・国民が、それぞれ何をすべきか(責務)を定めます。
最後に、理念を実現するための具体的な手立て(基本的施策)を並べます。
この「理念が先、施策が後」という流れを押さえると、条文がどの層の話かを見分けやすくなります。
上ほど抽象的な「考え方」、下ほど具体的な「手立て」。試験で穴埋めに出やすいのは、目的(第1条)・基本理念・基本的施策の指針(第14条)。
環境基本法の基本理念は、第3条から第5条までに、3つの柱として書かれています。
1つ目は、現在と将来の世代が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受し、それを将来へ継承していくこと(第3条)です。
2つ目は、環境への負荷の少ない、持続的に発展できる社会を構築していくこと(第4条)です。
3つ目は、地球環境保全を国際的協調のもとに積極的に推進すること(第5条)です。
これらは「考え方」を示した部分で、具体的に何をするかは、この後の基本的施策で決まります。
基本的施策のなかでも、その全体が目指す方向を示すのが第14条です。
第14条は、環境の保全に関する施策の策定及び実施は、次の3つの事項の確保を旨として行わなければならない、と定めています。
1つ目は、大気・水・土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されることです(第一号)。
2つ目は、生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られることです(第二号)。
3つ目は、人と自然との豊かな触れ合いが保たれることです(第三号)。
この「①良好な状態の保持 → ②多様性の確保 → ③触れ合い」という3つの並びが、第14条のキーワードです。
| 号 | 確保される事項 | 中身 |
|---|---|---|
| 第一号 | 自然的構成要素の良好な保持 | 大気・水・土壌その他の環境が良好な状態に保たれる |
| 第二号 | 生物の多様性の確保 | 生態系の多様性、野生生物の種の保存などが図られる |
| 第三号 | 人と自然との豊かな触れ合い | 人と自然とのつながり(触れ合い)が保たれる |
主語が「施策の策定及び実施」であること、述語が「確保を旨として行う」であることもセットで押さえておきます。
基本的施策には、第14条の指針のほかにも、試験でよく出る具体的なしくみが含まれます。
代表が、人の健康の保護と生活環境の保全のうえで維持されることが望ましい基準として定める環境基準(第16条)です。
環境基準は、行政が達成を目指す「目標」であり、工場などが直接守る排出のルール(排水基準・排出基準)とは性格が違います。
このほか、環境基本計画、環境影響評価の推進、経済的措置、国の財政措置なども基本的施策に並びます。
細かい中身まで暗記する必要はありませんが、「環境基準は環境基本法(第16条)が大もと」という位置づけは押さえておきます。
環境基本法は、公害総論の冒頭で、条文の語句を選ぶ穴埋め(組合せ)の形でほぼ毎年問われます。
令和7年度 公害総論 問2では、まさに第14条が出題され、施策の策定及び実施が自然的構成要素の良好な保持・生物の多様性の確保・人と自然との豊かな触れ合いの3つの確保を旨として行われる、という語句の組合せが問われました。
条文を丸暗記していなくても、「策定及び実施 → 良好な状態の保持 → 多様性の確保 → 触れ合い」という流れをたどれば、語句の組合せは決まります。
第14条の3つの確保事項は、第三号の「人と自然との豊かな触れ合い」が抜けやすいので、3本柱でまとめて覚えておくと取りこぼしません。
混同しやすい用語
基本理念 と 基本的施策
どちらも「基本」が付き、環境基本法の前半に並んでいるため混同しがちです。
基本理念(第3〜5条)は「環境保全のよりどころとなる考え方」、基本的施策(第14条以降)は「その考え方を実現するための具体的な手立て」です。
見分け方は、その条文が「○○を旨として施策を行う」「○○を定める」など"手立て"を述べていれば基本的施策、「享受と継承」「持続的発展」「国際的協調」など"目指す価値"を述べていれば基本理念、と読むことです。
環境基本法第14条が掲げる、施策の策定・実施が旨とすべき3つの確保事項を答えよ。
答え:①自然的構成要素が良好な状態に保持されること、②生物の多様性の確保が図られること、③人と自然との豊かな触れ合いが保たれること。
「①良好な状態の保持 → ②多様性の確保 → ③触れ合い」の順で覚えると、令和7年度 公害総論 問2のような穴埋めに対応できます。
「環境への負荷の少ない持続的に発展できる社会の構築」は、環境基本法の基本理念か、基本的施策か。
答え:基本理念(第4条)。
"目指す価値・考え方"を述べているので基本理念です。具体的な手立て(第14条の確保事項や環境基準など)が基本的施策です。
人の健康の保護と生活環境の保全のうえで維持されることが望ましい基準として、環境基本法が定めるものは何か。
答え:環境基準(第16条)。
環境基準は行政が達成を目指す「目標」で、工場が直接守る排水基準・排出基準とは性格が異なります。
環境基本法は、基本理念(考え方)を先に示し、それを実現する基本的施策(手立て)を後に並べる、という組み立ての法律です。
試験で狙われる第14条は、施策の策定・実施が「自然的構成要素の良好な保持」「生物の多様性の確保」「人と自然との豊かな触れ合い」の3つの確保を旨とする、と定めています。
第三号の「触れ合い」が抜けやすいので、3本柱を順番ごと覚えておきます。
参考
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
第14条の3つの確保事項の組合せでは、語句を1つだけ入れ替える・抜くことが狙われます。
第三号の「人と自然との豊かな触れ合い」が抜けやすいので、「①良好な状態の保持→②多様性の確保→③触れ合い」の3本柱でまとめて覚えます。