加圧浮上分離法(浮上分離)とは(微細気泡・固液分離・沈殿との違い)
エコまる
沈殿池で沈まない油や軽い汚れって、どうやって分けるの?
加圧浮上分離法は、水に空気を加圧して溶かし込み、減圧したときにできる微細な気泡を粒子に付着させて浮かせ、固液分離する方法です。
沈殿では沈みにくい油分や軽い懸濁物を、下に沈めるのではなく上に浮かせて取り除きます。
汚水処理特論では、しくみと適用対象、沈殿との違いが正誤問題で問われます。
加圧浮上分離法とは(微細気泡で「浮かせて」分ける)
排水中の汚れを分けるとき、比重の大きいSSやフロックは沈殿池で沈めて取り除きます。
ところが油分や軽いフロックは密度が水に近く、自然には沈んできません。
そこで発想を逆にして、汚れに気泡をくっつけ、見かけの密度を水より小さくして上に浮かせます。
加圧浮上では、水に空気を高い圧力で溶かし込み、常圧に開放します。
溶けきれなくなった空気が、無数の微細な気泡になって水中に出てきます。
この微細気泡が粒子・油滴・軽いフロックに付着し、見かけの密度が水より小さくなって浮上します。
浮き上がった汚れは水面にスカムとしてたまり、これをかき取って除去します。
気泡を付着させて浮かせるしくみなので、粒子の密度が水より大きくても浮上分離できる場合があります。
水に溶かした空気を減圧で微細な気泡に変え、粒子に付けて浮かせ、水面のスカムとしてかき取る。
沈殿(沈降分離)との違い
沈殿と加圧浮上は、汚れを動かす向きが逆です。
沈殿は重力で汚れを下に沈める沈降分離で、凝集沈殿のように比重の大きいフロックを沈殿池で取り除きます。
加圧浮上は気泡で汚れを上に浮かせる浮上分離で、沈殿が苦手な低密度の粒子や油分を受け持ちます。
分離にかかる時間も違い、加圧浮上の固液分離は沈降分離に比べて短くてすみます。
一方で、空気を加圧するため所要動力は凝集沈殿法より大きくなります。
微細なコロイド状の懸濁物には、加圧浮上でも凝集剤による前処理が必要になります。
| 項目 | 加圧浮上分離法(浮上分離) | 沈殿(沈降分離) |
|---|---|---|
| 分ける向き | 上へ浮かせる | 下へ沈める |
| 主な対象 | 油分・軽い懸濁物・軽いフロック | 比重の大きいSS・フロック |
| 分離の時間 | 短い | 長め |
| 所要動力 | 大きい(空気を加圧する) | 小さい |
| 微細コロイド | どちらも凝集剤による前処理が必要 | |
加圧水のつくり方と適用対象
気泡のもとになる加圧水は、原水や処理水の一部を圧力タンクへ送り、空気を溶かし込んでつくります。
この加圧水を減圧弁から浮上槽の原水と混ぜると、急な圧力低下で空気が微細気泡となって出てきます。
得意なのは、油分や軽い懸濁物のように沈殿では分けにくい汚れです。
石油精製や機械加工の含油排水、食品工場や塗装工場の微細なSSを含む排水などが代表例です。
凝集フロックが軽くて少なく、凝集沈殿では安定して沈められない用水の前処理にも使われます。
浮上した汚泥は空気を含んで水分が少ないため、活性汚泥法などで出る余剰汚泥の濃縮にも利用されます。
濃縮した汚泥は、後段で汚泥脱水機にかけてさらに水を絞ります。
汚水処理特論での問われ方
しくみや維持管理の項目を入れ替える正誤問題が定番です。
令和5年度 汚水処理特論 問18では、加圧浮上装置の維持管理で「溶解させる空気中の酸素濃度」を調整・監視する項目とした記述が、該当しないもの(正解)でした。見るべきなのは空気の溶解量・微細気泡の発生・浮上スカムの状態で、空気中の酸素濃度そのものではありません。
令和7年度 汚水処理特論 問3では、APIオイルセパレーターで油滴の浮上速度から必要な槽長を求めさせました。こちらは油が水より軽い性質をそのまま使う重力浮上で、気泡で浮かせる加圧浮上とはしくみが分かれます。
理解度チェック
加圧浮上で、微細な気泡はどうやって発生させるか。
水に空気を加圧して溶かし込み、常圧に減圧開放します。溶けきれなくなった空気が微細な気泡になって出てきます。
沈殿が苦手な汚れを、加圧浮上はどのように分けるか。
気泡を付着させて見かけの密度を水より小さくし、浮上させてスカムとしてかき取ります。油分や軽い懸濁物に有効です。
加圧浮上装置の維持管理で「溶解させる空気中の酸素濃度」は調整・監視項目になるか。
なりません。見るのは空気の溶解量・微細気泡の発生・浮上スカムの状態です(令和5年度 汚水処理特論 問18)。
まとめ
加圧浮上分離法は、水に溶かした空気を減圧で微細な気泡に変え、汚れに付けて浮かせる固液分離法です。
沈殿が下に沈めるのに対し、加圧浮上は上に浮かせて、油分や軽い懸濁物のように沈みにくい汚れを分けます。沈降分離より速い反面、空気を加圧するぶん動力は大きくなります。
参考
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験(汚水処理特論 令和2年問6・令和5年問18・令和7年問3)・公式正答
- 栗田工業 水処理教室「加圧浮上装置」(空気を加圧して水に溶解→大気圧に減圧開放→微細気泡で浮上分離、スカム、汚泥濃縮への利用)
- 排水処理装置メーカー技術資料(原水の一部を加圧→減圧弁で微細気泡を発生、含油排水・微細SS排水への適用)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
加圧浮上で見るのは溶け込んだ空気の量と気泡の状態で、「酸素濃度」の言葉に引っかけがあります。
加圧浮上装置で「溶解させる空気中の酸素濃度」は調整・監視項目に該当しません。また粒子の密度が水より大きくても、気泡を付ければ浮上できる場合があります(「密度が大きいと浮上できない」は誤り)。