フェライト法と鉄粉法(重金属排水を鉄で一括除去するしくみ)
エコまる
フェライト法と鉄粉法って、どっちも「鉄」が出てくるけど何が違うの?
フェライト法と鉄粉法は、どちらも鉄を使って、複数の重金属を一度に除く排水処理です。
金属ごとにpHを合わせて沈める重金属の水酸化物沈殿に対し、混ざった重金属をまとめて処理できるのが特徴です。
水質有害物質特論では、各方式のしくみと特徴が正誤問題で問われます。
鉄を使って重金属を一括除去する2つの方法
重金属が何種類も混ざった排水は、水酸化物法だと金属ごとに最適pHがずれて取りきれないことがあります。
そこで使うのが、鉄を介して重金属をまとめて固体に変えるフェライト法と鉄粉法です。
同じ「鉄」でも、フェライト法は鉄塩(鉄イオン)を加えて結晶に取り込む方法、鉄粉法は金属鉄(鉄粉)を加えて還元・吸着で除く方法です。入口の鉄の形が違います。
フェライト法は鉄イオンを結晶に育てて取り込み磁石で回収。鉄粉法は金属鉄の還元・吸着・共沈で沈める。入口の鉄の形が違う。
フェライト法のしくみ
フェライト法は、重金属を含む排水に鉄(Ⅱ)イオン(硫酸鉄など)を加えるところから始まります。
ここにアルカリを加えてpHを上げ、60℃以上に加熱しながら空気で酸化すると、強磁性のマグネタイト(黒い磁性体)の結晶が育ちます。
マグネタイトは、MO・Fe₂O₃(M=Fe・Co・Mn・Niなど)で表される、鉄を主成分とするフェライト(スピネル形の結晶)の一種です。
このとき、排水中の重金属イオンは鉄といっしょに結晶構造の中に取り込まれて固定されます。これが「一括除去」のしくみです。
できた結晶は強い磁性をもつので、磁石(磁気分離)で水から分離・回収できます。
鉄イオンと重金属を、磁石にくっつく1つの結晶に育ててから、まとめて引き寄せて取り出す、というイメージです。
取り込まれた重金属は安定なスピネル結晶の中にあるため、スラッジ(汚泥)から溶け出しにくく、二次汚染が起きにくいのが利点です。
一方で、キレート剤(EDTAや有機酸など金属を強く包む薬品)が排水にあると結晶ができにくいため、前処理としてキレートを壊す酸化分解が必要になります。
鉄粉法のしくみ
鉄粉法は、排水に金属の鉄(鉄粉)そのものを加えて重金属を除きます。
鉄粉ははたらきが3つあります。
1つ目は還元です。鉄が電子を渡し、六価クロムを三価クロムに、六価セレンを四価セレンに変えて沈みやすくします(くわしくはシアンと六価クロムの排水処理)。
2つ目は共沈です。鉄粉が溶けて生じた鉄イオンが水酸化物になり、重金属を巻き込んで沈みます。アルカリ側での凝集沈殿と同じはたらきです。
3つ目は吸着です。多孔質で表面積の大きい特殊な鉄粉を使うと、表面に重金属を吸い付けます。
この吸着のおかげで、還元では取りにくかった亜鉛・カドミウム・ニッケルなども処理できます。
鉄粉法は、生じたスラッジの沈降性・脱水性がよいという操作上の利点があります。
フェライト法と鉄粉法の違い
2つの方式を、加える鉄の形と除去のしくみで並べます。
| 項目 | フェライト法 | 鉄粉法 |
|---|---|---|
| 加える鉄 | 鉄(Ⅱ)イオン(鉄塩) | 金属の鉄(鉄粉) |
| 除去のしくみ | マグネタイト結晶に重金属を取り込む | 還元・共沈・表面への吸着 |
| 固液分離 | 磁気分離(磁性体なので磁石で回収) | 沈殿(沈降・脱水がよい) |
| 主な特徴 | 各種重金属を一括処理。スラッジが安定で溶出しにくい。加熱が必要 | 還元が要る六価クロム等に有効。亜鉛・カドミウム・ニッケルも処理可能 |
どちらも、鉄を介して複数の重金属をまとめて固体に変え、混合排水を一括処理できる点が共通します。
水質有害物質特論での問われ方
フェライト処理の欠点・利点を入れ替える正誤問題が定番です。
令和6年度の水質有害物質特論(問3)では、フェライト法・鉄粉法の記述のなかで、「フェライトの結晶構造に取り込まれた重金属がスラッジから溶出しやすいという欠点がある」とする記述が誤りでした。実際は結晶に固定されて溶出しにくく、安定です。
令和3年度の水質有害物質特論(問3)でも、「重金属はフェライトの結晶構造に取り込まれるが、溶出しやすい欠点がある」とする記述が同じく誤りとして問われました。
令和4年度の水質有害物質特論(問2)では、「複数の重金属が共存するとマグネタイトは生成しないため、フェライト法は一括処理に適用できない」とする記述が誤りでした。フェライト法はむしろ各種重金属の一括処理ができます。
理解度チェック
フェライト法でできたスラッジは、重金属が溶出しやすいか、溶出しにくいか。
溶出しにくいです。重金属が安定なマグネタイト(フェライト)の結晶構造に取り込まれて固定されるため、汚泥からの再溶出が少なく安定します。
フェライト法で生成した結晶は、どうやって水から分離・回収するか。
磁気分離(磁石)です。生成するマグネタイトは強磁性なので、磁力で引き寄せて回収できます。
フェライト法は鉄イオン(鉄塩)を、鉄粉法は何を加えて重金属を除くか。
鉄粉法は金属の鉄(鉄粉)を加えます。金属鉄の還元作用に、溶け出した鉄イオンによる共沈と表面への吸着が加わって重金属を除きます。
まとめ
フェライト法と鉄粉法は、鉄を使って混ざった重金属を一括除去する処理です。
フェライト法は鉄塩を加えて重金属をマグネタイト結晶に取り込み磁気分離する方法で、スラッジが安定で溶出しにくいのが利点です。鉄粉法は金属鉄の還元・共沈・吸着で除き、沈降・脱水がよいのが利点です。
「結晶に取り込む=溶出しにくく安定」「一括処理ができる」の2点を押さえれば、水質有害物質特論のフェライト処理の問題は取りきれます。
参考
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験(水質有害物質特論 令和6年問3・令和3年問3・令和4年問2)・公式正答
- フェライト法による重金属除去(マグネタイト=MO・Fe₂O₃のスピネル形結晶への取り込み・60℃以上での酸化生成・磁気分離・スラッジの安定性)
- 鉄粉法による重金属除去(金属鉄の還元作用・溶出鉄イオンの共沈・多孔質鉄粉表面への吸着)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
フェライト処理の「スラッジが安定か/溶出するか」を逆にした記述が狙われます。
「結晶に取り込まれた重金属がスラッジから溶出しやすい」は誤りで、正しくは結晶に固定されて溶出しにくく安定です。取り込み=閉じ込めて安定、と覚えます。