ほう素を含む排水の処理(凝集沈殿の限界・N-メチルグルカミン形キレート樹脂)
エコまる
ほう素って、凝集沈殿で沈めても基準まで下がらないのはどうして?
ほう素は、水中でほう酸やほう酸イオンとして溶けやすく、凝集沈殿だけでは十分に除去できない物質です。
そのため、凝集沈殿で大半を落とし、残りをN-メチルグルカミン形キレート樹脂で吸着して仕上げる方法が使われます。
水質有害物質特論では、この処理の流れと薬剤・樹脂の名前が正誤問題で問われます。
なぜ凝集沈殿だけでは取りきれないのか
多くの重金属は、アルカリ側にすると水に溶けにくい水酸化物になって沈みます(重金属の水酸化物沈殿)。
ところがほう素は、アルカリにしても溶けやすいほう酸イオンのままで、沈殿をつくりにくいです。
薬剤の沈殿に取り込んで(共沈)落とすことはできますが、濃度が低くなるほど取れにくくなり、排水基準のあたりが処理の限界になります。
ほう素及びその化合物の排水基準は、海域以外で10 mg/L以下、海域で230 mg/L以下です。
凝集沈殿でどこまで落とすか(薬剤の併用)
ほう素の凝集沈殿では、薬剤を2種類組み合わせて使います。
代表的な併用法は次の2つです。
| 併用法 | 加える薬剤 | 仕組み |
|---|---|---|
| アルミニウム塩+消石灰 | アルミニウム塩(硫酸ばんど)と水酸化カルシウム(消石灰) | pHを9以上に上げ、生じた沈殿にほう素を取り込んで共沈させる。 |
| 鉄塩+水酸化マグネシウム | 鉄塩と水酸化マグネシウム | アルカリ側で生じる水酸化物のフロックにほう素を共沈させる。 |
どちらも沈殿に巻き込んで落とす方法のため、低濃度域では取りきれず、ここから先は吸着で仕上げます。
凝集沈殿(共沈)で大半を落とし、残りをN-メチルグルカミン形キレート樹脂で吸着して仕上げる。
高度処理=N-メチルグルカミン形キレート樹脂
排水基準の近くまで下がった残りのほう素は、イオン交換樹脂の一種であるほう素選択吸着樹脂で取ります。
この樹脂がほう素をつかまえる手(配位基)はN-メチルグルカミン基で、ほう酸を選んで捕まえます。
樹脂が吸いきったら、再生して繰り返し使います。
再生は、まず酸(硫酸)でほう素を引きはがし、次にアルカリ(水酸化ナトリウム)でもとのOH形にもどす2段階です。
水質有害物質特論での問われ方
ほう素排水の処理は、ふっ素排水とセットで毎年のように出ます。
令和6年度 問2では、ほう素吸着樹脂の配位基を選ぶ問題が出て、答えはN-メチルグルカミン基でした。
令和3年度 問8では、凝集沈殿の併用法として鉄塩と水酸化マグネシウムを用いるという記述が出ました。
令和4年度 問6では、樹脂の再生を「高濃度の塩化ナトリウム水溶液で行う」とする記述が出ました。実際の再生は酸でほう素を脱離させ、アルカリでもどす方法です。
令和7年度 問4では、凝集沈殿とN-メチルグルカミン形樹脂を組み合わせた処理フローで、添加剤と再生剤の組合せが問われました。
理解度チェック
ほう素が凝集沈殿だけでは取りきれないのはなぜか。
アルカリにしても溶けやすいほう酸イオンのままで沈殿をつくりにくく、濃度が低くなるほど取れにくいからです。共沈で落とせるのは排水基準のあたりまでが限界です。
ほう素を選択的に吸着する樹脂の配位基は何か。
N-メチルグルカミン基です。ほう酸を選んで捕まえます。
N-メチルグルカミン形キレート樹脂の再生は、どのように行うか。
酸(硫酸)でほう素を脱離させ、次にアルカリ(水酸化ナトリウム)でもとにもどします。食塩水(塩化ナトリウム)では再生しません。
まとめ
ほう素は溶けやすく、凝集沈殿(アルミニウム塩+消石灰、鉄塩+水酸化マグネシウム)で排水基準近くまで落とし、残りをN-メチルグルカミン形キレート樹脂で吸着して仕上げます。
「凝集沈殿だけでは限界」「樹脂の再生は酸とアルカリ(食塩水ではない)」の2点を押さえれば、水質有害物質特論のほう素の問題は取りきれます。
参考
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験(水質有害物質特論 令和元年問3・令和3年問8・令和4年問6・令和6年問2・令和7年問4)・公式正答
- ほう素排水処理の標準的事項(凝集沈殿の薬剤併用・共沈/N-メチルグルカミン形ほう素選択吸着樹脂と酸・アルカリによる再生)
- 水質汚濁防止法 一律排水基準(ほう素及びその化合物)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
「凝集沈殿だけで済む」かと「樹脂の再生剤」が狙われます。
ほう素は溶けやすく、凝集沈殿だけでは排水基準近くが限界で、仕上げにN-メチルグルカミン形キレート樹脂を使います。
この樹脂の再生は酸とアルカリで行い、ふつうのイオン交換樹脂のような食塩水(塩化ナトリウム)ではありません。