NOAEL・TDI・不確実係数…リスク評価の用語が多くて、どれをどう使うのかで迷いませんか。「有害性×暴露量」の考え方から順に整理します。
この記事の要点
化学物質のリスクは、その物質の有害性と、どれだけ体に入るか(暴露量)の両方で決まります。有害でも暴露がなければリスクは小さくなります。
閾値(これ以下なら害が出ない量)がある物質では、無毒性量(NOAEL)を不確実係数で割って、耐容一日摂取量(TDI)を求めます。不確実係数は通常100=種差10×個体差10です。
「この物質は危ない/安全」は、毒性の強さだけでは決められません。
どれだけ体に入るか(暴露)まで考えて、初めてリスクが分かります。
リスク評価の考え方と、出てくる用語を整理します。
リスクとは、その物質の有害性と、暴露量(体に入る量)の両方で決まる、健康への影響の起こりやすさです。
どんなに有害な物質でも、暴露がなければリスクは小さくなります。
逆に、有害性が中くらいでも、大量に長く暴露すればリスクは大きくなります。
「有害性だけでリスクが決まる」と考えるのは誤りです。
多くの物質には、これ以下なら有害な影響が出ない量(閾値)があります。
このような物質では、動物実験などで無毒性量(NOAEL)=有害な影響が見られなかった最大の量を求めます。
ただし、動物の結果をそのまま人にあてはめられないので、安全側に余裕をもたせる不確実係数で割ります。
耐容一日摂取量(TDI)= NOAEL ÷ 不確実係数
不確実係数は通常100で、その内訳は種差(動物と人の差)10 × 個体差(人の間の差)10 = 100です。
TDIは「一生にわたり毎日その量まで取り込んでも健康に影響がないと考えられる量」で、NOAELを不確実係数で割って(除して)求める点に注意します(掛けるのではありません)。
TDI=NOAEL÷不確実係数。不確実係数100は、種差10と個体差10の積。割って求める点に注意。
発がん性物質などには、これ以下なら安全という量(閾値)がないと考えられるものがあります。
こうした物質では、TDIではなく、実質安全量(VSD)=発がんリスクが十分小さい(実質的に問題ないとみなせる)暴露量を用います。
「閾値あり=NOAEL・TDI」「閾値なし=VSD」と区別します。
リスク評価は、水質概論で、用語の意味や計算の向きとして問われます。
令和元年度 水質概論 問10では、不確実係数の通常値100が種差10×個体差10であることが正しい記述でした。あわせて、リスクは有害性だけでなく暴露量でも決まること、NOAEL(無毒性量)は閾値のある物質に使うこと、TDIはNOAELを不確実係数で除したもの(乗じるは誤り)、VSDは閾値のない物質に使うこと、が問われています。
化学物質のリスクは、有害性のほかに何で決まるか。
答え:暴露量(体に入る量)
リスクは「有害性×暴露量」で決まります。有害でも暴露がなければリスクは小さくなります。
耐容一日摂取量(TDI)は、NOAELを不確実係数で割るか、掛けるか。
答え:割る(除する)。TDI=NOAEL÷不確実係数
不確実係数で割って、安全側に小さくします。「掛ける」は誤りです。
不確実係数の通常値100は、何と何の積か。
答え:種差10 × 個体差10
動物と人の差(種差)と、人どうしの差(個体差)を、それぞれ10ずつ見込んで100とします。
化学物質のリスクは、有害性と暴露量の両方で決まります。
閾値がある物質はNOAEL÷不確実係数でTDIを求め(不確実係数100=種差10×個体差10)、閾値がない物質はVSDを用います。
TDIは「割って」求めること、不確実係数の内訳を取り違えないことがポイントです。
参考
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
TDIを求める計算の向き(除す・乗じる)が狙われます。
TDIはNOAELを不確実係数で除したものであり、乗じるとするのが誤りでした(不確実係数の通常値100=種差10×個体差10。令和元年度 水質概論 問10)。