環境基準とは(大気・水質・土壌・騒音の4分野・行政上の目標)
エコまる
「環境基準」って、工場が守らないと罰せられる基準のこと?
環境基準は、公害総論の冒頭で、各公害法の前にその大もととして問われます。
名前は「基準」ですが、工場が直接守る規制値とは性格が違います。
定義と対象分野、そして「目標」という立ち位置を順に押さえます。
環境基準とは(環境基本法第16条の定義)
環境基準とは、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準として、政府が定めるものです。
根拠は環境基本法の第16条で、環境基準は同法が並べる基本的施策の一つに位置づけられます。
大切なのは「維持されることが望ましい基準」という言い回しです。
これは、行政が達成と維持を目指す目標であって、個々の工場の排出を直接取り締まる規制値ではありません。
環境省も、環境基準を行政上の政策目標と位置づけています。
環境基準が設定される4つの分野
環境基本法第16条は、環境基準を定める対象を4つ挙げています。
大気の汚染・水質の汚濁・土壌の汚染・騒音に係る環境上の条件、の4分野です。
この4つに悪臭は含まれません。悪臭は悪臭防止法で別に扱われます。
なお、ダイオキシン類の環境基準だけは、環境基本法ではなくダイオキシン類対策特別措置法(第7条)にもとづいて、大気・水質・土壌について定められます。
環境基準は大気・水質・土壌・騒音の4分野(環境基本法第16条)で設定。ダイオキシン類だけは特措法(ダイオキシン類対策特別措置法)で別に定められる。
「望ましい目標」であって規制基準ではない(違い)
環境基準は、川や大気をこの水準に保ちたいという行政の目標です。
工場の排出を直接しばるのは、大気汚染防止法の排出基準や水質汚濁防止法の排水基準といった個別法の規制値です。
環境基準を超えても、それだけでただちに罰則が科されるわけではありません。
一方、排出基準・排水基準に適合しない排出は、改善命令や罰則の対象になります。
2つの性格の違いを表にまとめます。
| 項目 | 環境基準 | 排出基準・排水基準 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 環境基本法(第16条) | 大気汚染防止法・水質汚濁防止法などの個別法 |
| 性格 | 達成・維持を目指す行政上の目標 | 排出を直接しばる規制値 |
| 対象 | 大気・水・土壌・騒音などの環境そのもの | 工場・事業場の排出(排出ガス・排出水) |
| 守らないと | ただちに罰則ではない(達成を目指す) | 改善命令・罰則の対象 |
水質では、この環境基準と排水基準の使い分けや上乗せ排水基準が特によく問われます(環境基準と排水基準の違いでくわしく扱います)。
常に科学的判断で改定される
環境基準は、一度決めたら固定というものではありません。
第16条は、環境基準について常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない、と定めています。
新しい知見が出れば、対象物質や基準値が見直されます。
また大気の環境基準では、物質ごとに「いつまでに達成するか」という達成期間も定められます。
公害総論での問われ方
環境基準は、公害総論の冒頭で、第16条の語句を選ぶ穴埋め・組合せの形でほぼ毎年問われます。
令和6年度 公害総論 問2では、環境基準が「環境上の条件について、人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準」である、という語句の組合せが問われました。
令和5年度 公害総論 問4では、対象に悪臭を混ぜた記述が誤りでした。環境基準の対象は大気・水質・土壌・騒音の4つで、悪臭は含まれません。
令和7年度 公害総論 問3では、環境基準を当てはめる地域の指定事務を行う者が問われ、市に属する地域は市の長、それ以外は都道府県の知事という対応が、下線部で入れ替えられていました。
理解度チェック
環境基準の根拠となる条文と、それが定める基準の性格を答えよ。
答え:環境基本法第16条。性格は、達成・維持を目指す行政上の目標です。
「維持されることが望ましい基準」であり、工場の排出を直接しばる規制値ではありません。
環境基準が設定される分野を4つ答えよ。悪臭は含まれるか。
答え:大気の汚染・水質の汚濁・土壌の汚染・騒音の4つ。悪臭は含まれません。
ダイオキシン類だけは、ダイオキシン類対策特別措置法にもとづいて別に定められます。
環境基準と排水基準のうち、適合しない排出が改善命令・罰則の対象になるのはどちらか。
答え:排水基準(排出を直接しばる規制値)。
環境基準は行政が目指す目標で、超えてもただちに罰則の対象にはなりません。
まとめ
環境基準は、環境基本法第16条にもとづき、大気・水質・土壌・騒音の4分野で「維持されることが望ましい」と定める、行政上の目標です。
工場をしばる排出基準・排水基準(規制値)とは性格が違い、超えてもただちに罰則ではありません。
対象に悪臭は含まず、常に科学的判断で改定される点もあわせて押さえておきます。
参考
- 環境基本法(平成5年法律第91号)第16条(環境基準)/e-Gov法令検索
- 環境省「環境基準」(人の健康を保護し生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準・行政上の政策目標)
- ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号)第7条(ダイオキシン類に係る環境基準)
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験(公害総論 令和6年問2・令和5年問4・令和7年問3)・公式正答
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
環境基準を規制値と取り違える、対象分野に悪臭を混ぜる、の2つが狙われます。
環境基準は「維持されることが望ましい目標」で、工場の排出を直接しばる規制基準ではありません。また対象は大気・水質・土壌・騒音の4つで、悪臭は含みません。