振動の距離減衰(幾何減衰と内部減衰)
エコまる
地面を伝わる振動って、遠ざかるとどうやって弱くなっていくの?
振動の距離減衰は、地盤を伝わる振動が、振動源から離れるほど小さくなっていく現象です。
工場の機械や建設作業の揺れは、地盤の中を波となって広がりながら弱まり、敷地境界や近所の振動の苦情(感覚公害)につながる手前で小さくなっていきます。
この減り方は、波面が広がることによる減衰と、地盤そのものに吸われる減衰の2つが組み合わさって決まります。
距離減衰は「幾何減衰」と「内部減衰」の組合せ
地盤を伝わる振動の距離減衰は、性質の違う2つの減衰の足し算で表されます。
1つは幾何減衰(幾何拡散)で、波面が広がってエネルギーの密度が下がるために小さくなる分です。
もう1つは内部減衰(材料減衰)で、地盤の内部摩擦によって振動のエネルギーが熱に変わり、失われる分です。
幾何減衰は距離だけで決まり、内部減衰は地盤の性質と振動の周波数で決まります。
距離減衰は、波面の広がりによる幾何減衰と、地盤に吸われる内部減衰の組合せ。
なぜ実体波と表面波で幾何減衰が違うのか
振動源から地盤に出る波は、伝わり方で実体波と表面波に分かれます。
実体波は地中を進む波で、縦波(P波)と横波(S波)があります。
表面波は地表面に沿って進む波で、レイリー波やラブ波があります。
実体波は半球状に広がり、表面波であるレイリー波は円筒状に広がります。
広がり方が違うので、距離に対する振幅の減り方、つまり幾何減衰も変わります。
表面波のほうが幾何減衰が小さく、実体波より遠くまで届きます。
地表で測る公害振動では、表面波であるレイリー波が主成分になります。
同じ「距離が2倍で何dB」でも、空気を伝わる音の距離減衰は点音源・線音源の形で決まり、地盤を伝わる振動とは分けて考えます。
実体波は地中へ半球状に広がり、表面波は地表に沿って広がる。表面波のほうが減りにくく遠くまで届く。
実体波と表面波の違いを並べます。
| 項目 | 実体波 | 表面波(レイリー波) |
|---|---|---|
| 伝わる場所 | 地中(深いところにも伝わる) | 地表面に沿って |
| 波の種類 | 縦波(P波)・横波(S波) | レイリー波・ラブ波 |
| 広がり方 | 半球状 | 円筒状 |
| 幾何減衰 | 大きい(幾何減衰係数 1) | 小さい(幾何減衰係数 0.5) |
| 距離と振幅 | 距離に反比例(r−1) | 距離の平方根に反比例(r−1/2) |
| 公害振動での役割 | 小さい | 地表振動の主成分 |
内部減衰は周波数が高いほど大きい
内部減衰は、地盤の内部摩擦によって振動のエネルギーが熱に変わり、失われる分です。
内部減衰の大きさを表す内部減衰係数は、振動の周波数が高いほど大きく、地盤を伝わる速度が速いほど小さくなります。
高い周波数の振動ほど、地盤に吸われて早く小さくなる、と読みます。
幾何減衰が距離だけで決まるのに対して、内部減衰は距離が伸びるほど効いてくる、地盤側の減衰です。
距離減衰の計算では、揺れの大きさを表す振動レベル(dB)どうしの差として、幾何減衰の分と内部減衰の分を足し合わせて求めます。
騒音・振動概論/特論での問われ方
距離減衰は、波の種類による幾何減衰の違いと、内部減衰の性質を入れ替える正誤問題が定番です。
弾性波の問題では、縦波と横波を実体波ということ、表面波にレイリー波やラブ波があること、公害振動で主に問題となるのはレイリー波であることが問われました。衝撃を加えたとき、離れた場所で最初に観測されるのは横波だとする記述は誤りで、最初に届くのは速い縦波です。
振動の伝搬の問題では、実体波は半球状・レイリー波は円筒状に広がり、幾何減衰は表面波のほうが小さいこと、内部減衰係数は周波数が高いほど大きく伝搬速度が速いほど小さいことが問われました。
計算では、距離が変わったときの振動レベルを、幾何減衰(倍距離あたり何dB)と内部減衰(係数×距離)を足し合わせて求めさせる出題が繰り返されています。
理解度チェック
振動の距離減衰を作る2つの減衰は何か。
幾何減衰(波面が広がってエネルギーが薄まる)と内部減衰(地盤の内部摩擦で熱に変わる)です。距離減衰はこの2つの組合せで決まります。
実体波と表面波(レイリー波)では、どちらが幾何減衰が小さく遠くまで届くか。
表面波(レイリー波)です。円筒状に広がり振幅は距離の平方根に反比例(r−1/2)するため、半球状で距離に反比例(r−1)する実体波より減りにくく、遠くまで届きます。
地盤の内部減衰係数は、振動の周波数が高くなると大きくなるか、小さくなるか。
大きくなります。内部減衰係数は周波数が高いほど大きく、地盤を伝わる速度が速いほど小さくなります。
地表で測る公害振動の主成分になる波は何か。
レイリー波(表面波)です。地表面に沿って広がり、地表振動では卓越します。
まとめ
振動の距離減衰は、波面が広がる幾何減衰と、地盤に吸われる内部減衰の組合せです。
実体波より表面波(レイリー波)のほうが幾何減衰が小さく遠くまで届き、内部減衰は周波数が高いほど大きくなります。
「表面波は減りにくい」「内部減衰は高い周波数ほど大きい」の2点を押さえれば、距離減衰の問題の向きを取り違えません。
参考
- 地盤振動の距離減衰(幾何減衰=波面の広がり/内部減衰=地盤の内部摩擦、実体波は半球状・表面波は円筒状に広がる、表面波のほうが減衰が小さい)
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験 騒音・振動概論/騒音・振動特論 出題範囲・公式正答
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
幾何減衰の大小と、内部減衰の周波数の向きが狙われます。
幾何減衰は表面波(レイリー波)のほうが実体波より小さく、遠くまで届きます。内部減衰係数は周波数が高いほど大きくなります(小さい、ではありません)。