地盤を伝わる弾性波の違い(P波・S波・レイリー波)
エコまる
地盤を伝わる弾性波って、P波・S波・レイリー波で何が違うの?
地面を伝わる振動は、いくつかの種類の波が混ざって伝わっています。
工場や建設作業の振動が問題になるとき、地表で主役になる波は決まっています。
弾性波とは、地盤のような弾性体の中を伝わっていく波で、大きく実体波(P波・S波)と表面波(レイリー波・ラブ波)に分かれます。
実体波は地盤の内部を伝わる波、表面波は地表面に沿って伝わる波です。
公害の地盤振動でとくに問題になるのは、表面波の一種であるレイリー波です。
地盤を伝わる弾性波は実体波と表面波に分かれる
地表で観測される揺れには、地中を通ってくる実体波と、地表に沿って伝わる表面波があります。
実体波には、進む向きに伸び縮みするP波(縦波)と、進む向きと直角に揺れるS波(横波)があります。
表面波の代表がレイリー波で、地表の点がだ円を描くように動きます。表面波にはほかにラブ波もあります。
3つの波は、地盤の各点(粒子)の動き方がそれぞれ違います。
P波は進む向きと同じ向きに、S波は直角に、レイリー波はだ円を描いて動く。
P波は進む向きと同じ向きに伸び縮みし、S波は直角に揺れ、レイリー波はだ円を描いて動きます。
P波・S波・レイリー波の違い
粒子の動き・速さ・伝わる媒質・距離による減り方で並べると、違いがはっきりします。
| 波 | 型・粒子の動き | 速さ | 伝わる媒質 | 距離による減衰 |
|---|---|---|---|---|
| P波(実体波) | 縦波。進む向きに伸び縮み(疎密) | 最も速い | 固体・液体・気体すべて | 実体波として速く減る |
| S波(実体波) | 横波。進む向きと直角に揺れる | P波より遅い | 固体だけ(液体・気体は伝わらない) | 実体波として速く減る |
| レイリー波(表面波) | 地表でだ円を描く | 最も遅い(S波の約0.9倍) | 地表付近 | ゆるやか(遠くまで届く) |
速さはP波が最も速く、次にS波、レイリー波の順です。
離れた場所で最初に到達するのは、いちばん速いP波です。
レイリー波の速さはS波の約0.9倍で、3つの中ではいちばん遅くなります。
伝わる媒質も違います。P波は固体・液体・気体のどれでも伝わりますが、S波は固体だけで、液体や気体の中は伝わりません。
S波が横波で、媒質のねじれ(ずれ)で伝わる波だからです。形を保てない液体や気体は、このねじれを伝えられません。
なぜ公害の地盤振動では表面波(レイリー波)が主役なのか
振動源から離れると、波は広い範囲に広がってエネルギーが薄まり、揺れは小さくなります。これが距離による減衰(幾何減衰)です。
実体波は地中へ半球状に広がるのに対し、レイリー波は地表を円筒状に広がります。
広がり方が違うため、レイリー波のほうが距離による減衰がゆるやかで、遠くまで届きます。
実体波とレイリー波で距離による減り方がどれだけ違うかは、振動の距離減衰でくわしく扱います。
振動源から見ると、波の広がり方はこう違います。
遠くの地表の揺れは、減りにくいレイリー波が主役になる。
このため、振動源から離れた地表では、レイリー波による揺れが支配的になります。
地表に伝わったレイリー波の揺れは、最終的に振動レベル(dB)として測られ、規制の対象になります。
騒音・振動の試験での問われ方
騒音・振動概論では、地盤を伝わる弾性波の種類と性質が、正誤を選ぶ形でくり返し問われています。
令和5年度には、P波・S波・レイリー波・ラブ波の粒子の動き(進む向きに平行か直角か、だ円か)を見分ける問題が出ています。
令和4年度・令和6年度には、実体波と表面波の区別、最初に到達する波、公害振動でレイリー波が大きいことなどを問う「弾性波」の問題が出ています。
地表で最初に観測されるのは速いP波で、S波が最初という記述は誤りでした。ここがよく狙われます。
理解度チェック
P波・S波・レイリー波のうち、最も速く、離れた地点に最初に到達するのはどれか。
答え:P波
P波は縦波で3つの中で最も速く、固体・液体・気体のどれも伝わります。離れた場所で最初に届くのもP波です。
S波が固体だけを伝わり、液体や気体を伝わらないのはなぜか。
答え:S波が横波で、媒質のねじれ(ずれ)で伝わる波だから
形を保てない液体や気体は、このねじれを伝えられません。だからS波は固体の中だけを伝わります。
公害の地盤振動で主役になる波は何か。その粒子の動きはどうか。
答え:レイリー波(表面波)。地表でだ円を描くように動く。
レイリー波は距離による減衰がゆるやかで遠くまで届くため、振動源から離れた地表ではこの波の揺れが支配的になります。
P波・S波・レイリー波を、速い順に並べるとどうなるか。
答え:P波 > S波 > レイリー波
レイリー波の速さはS波の約0.9倍で、3つの中ではいちばん遅くなります。
まとめ
地盤を伝わる弾性波は、実体波(P波・S波)と表面波(レイリー波)に分かれます。
P波は縦波で最も速く、固体・液体・気体を伝わります。S波は横波で固体だけ、P波より遅い波です。レイリー波は地表をだ円運動で伝わる表面波で、距離による減衰がゆるやかなため、公害の地盤振動の主役になります。
「速さはP>S>レイリー波」「公害振動の主役はレイリー波」の2点を押さえておきます。
参考
- 地盤を伝わる弾性波の基礎(実体波=P波・S波/表面波=レイリー波・ラブ波、P波は固体・液体・気体を伝わりS波は固体のみ、レイリー波の伝播速度はS波の約0.9倍、表面波は実体波より距離減衰がゆるやか)
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験 騒音・振動概論 出題範囲・公式正答(令和4・5・6年度の弾性波・地盤を伝わる波動の問題ほか)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
波の「速さの順」と「伝わる媒質」の取り違えが狙われます。
いちばん速く最初に到達するのはP波で、S波ではありません。またS波は固体だけを伝わり、液体・気体の中は伝わりません。