メタン発酵(嫌気性処理)とは(好気処理との違い・原理・UASBの位置づけ)
エコまる
メタン発酵って、活性汚泥とどう違うの?
メタン発酵(嫌気性処理)は、酸素のない条件で微生物が有機物を分解し、メタンと二酸化炭素を生み出す処理です。
このときに出るメタンと二酸化炭素を主成分とする可燃性ガスをバイオガスと呼びます。
汚水処理特論では、好気処理との違いと、各方式のしくみが正誤問題で問われます。
メタン発酵(嫌気性処理)とは
水処理の生物処理は、酸素を使うかどうかで好気処理と嫌気処理に分かれます。
嫌気処理の代表がメタン発酵です。酸素のない(嫌気の)条件で、嫌気性微生物が有機物を分解します。
このとき有機物の炭素は、好気処理のように二酸化炭素まで燃やし切るのではなく、メタンと二酸化炭素に変わって気体(バイオガス)として抜けていきます。バイオガスはメタンが約6割で、残りの大半が二酸化炭素です。
メタンは燃える気体なので、回収して燃料に使えます。汚れを減らしながらエネルギーも取れるのが、嫌気処理の特徴です。
好気処理(活性汚泥)との違い
同じ生物処理でも、好気の活性汚泥法とメタン発酵では、酸素の要否から出てくる汚泥の量まで大きく違います。
好気処理は空気(酸素)を送る曝気が必要で、その分の電力がかかります。メタン発酵は曝気が不要で、エネルギー消費が小さくてすみます。
余剰汚泥の出方も逆向きです。好気処理は分解のエネルギーで菌体が増えるため汚泥が多く出ますが、メタン発酵は菌体の代わりにメタンを生むため、余剰汚泥が少ないです。
下の表で、両者の向きを並べます。
| 項目 | 好気処理(活性汚泥) | 嫌気処理(メタン発酵) |
|---|---|---|
| 酸素・曝気 | 必要(空気を送る) | 不要 |
| 有機物の行き先 | 主に二酸化炭素と菌体(汚泥) | メタン+二酸化炭素(バイオガス) |
| 余剰汚泥 | 多い | 少ない |
| エネルギー | 曝気で電力を使う | メタンを燃料に回収できる |
| 向く排水 | 低〜中濃度の有機排水 | 高濃度の有機排水 |
| 処理速度 | 速い | 遅い(立ち上げに時間) |
メタン発酵だけでは処理水の汚れを放流できる水準まで落としきれないことが多いため、硝化脱窒を含む好気処理を後段に置いて仕上げる二段処理がよく組まれます。
メタン発酵は二段で進む
メタン発酵は、はたらく菌の違いで大きく二段に分かれます。
前段は酸生成菌です。有機物を分解して、有機酸(酢酸など)や水素をつくります。
後段はメタン生成菌です。前段で出た有機酸や水素を使って、メタンと二酸化炭素を生みます。
この二段を1つの槽でまとめて行う方式と、酸生成の槽とメタン生成(ガス生成)の槽を分ける二相式があります。
前段の酸生成菌が有機酸・水素をつくり、後段のメタン生成菌がメタンと二酸化炭素を生む。
水温の管理も運転の要です。保つ温度で中温消化と高温消化に分かれ、中温消化は30〜38℃程度、高温消化は50〜55℃程度に保ちます。
高温消化は反応が速い反面、温度や流入の変化に敏感です。排水が止まる無負荷の状態が続いたときの生物活性への影響も、中温消化より高温消化のほうが大きく現れます。
代表的な反応槽(UASBなど)の位置づけ
メタン発酵を行う反応槽には、嫌気ろ床(AF)、嫌気流動床(AFB)、グラニュール汚泥膨張床(EGSB)など複数の方式があります。
なかでも代表的なのがUASB(上向流式嫌気汚泥床)です。沈降性のよい粒状の汚泥(グラニュール汚泥)の層に、排水を下から上向きに通して処理します。
方式ごとに、汚泥をどう保持するか(付着か、グラニュールか、流動か)が異なります。この組合せが入れ替えられていないかが、各方式を問う問題の分かれ目です。
汚水処理特論での問われ方
各方式のしくみや、維持管理での温度・pHの扱いを入れ替える正誤問題が定番です。
令和7年度 汚水処理特論 問15では、各種の嫌気処理法のうち、自己造粒したグラニュール汚泥を嫌気流動床(AFB)の特徴とした記述が誤りでした。グラニュール汚泥を活かすのはUASBやその高負荷型のEGSBです。
令和6年度 汚水処理特論 問19では、無負荷の状態が続いたときの生物活性への影響を「高温消化より中温消化のほうが大きい」とした記述が誤りでした。実際は高温消化のほうが大きく影響を受けます。
理解度チェック
メタン発酵が好気処理と違って要らないものは何か。
曝気(空気・酸素の供給)です。嫌気の条件で進むため曝気が不要で、余剰汚泥も少なくてすみます。
メタン発酵の二段は、それぞれどの菌がはたらくか。
前段が酸生成菌(有機物→有機酸・水素)、後段がメタン生成菌(有機酸・水素→メタン+二酸化炭素)です。
無負荷状態の影響が大きいのは、中温消化と高温消化のどちらか。
高温消化です。反応は速い反面、温度や流入の変化に敏感で、立て直しにも時間がかかります。
まとめ
メタン発酵(嫌気性処理)は、酸素のない条件で微生物が有機物を分解し、メタンと二酸化炭素(バイオガス)を生む処理です。好気の活性汚泥法と違って曝気が不要で余剰汚泥が少なく、高濃度の有機排水に向きます。酸生成菌→メタン生成菌の二段で進み、代表的な反応槽がUASBです。
参考
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験(汚水処理特論 令和7年問15・令和6年問19)・公式正答
- 環境省「メタンガス化に関する基本的事項」(嫌気性微生物による有機物の分解とメタン・二酸化炭素の生成)
- 嫌気性処理の標準的事項(曝気不要・余剰汚泥が少ない/酸生成菌・メタン生成菌の二段/中温・高温消化の温度域)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
方式と汚泥の保持形態、そして中温・高温の向きが狙われます。
グラニュール汚泥を使うのはUASB・EGSBで、嫌気流動床(AFB)ではありません。また無負荷など環境変化の影響が大きいのは、中温消化ではなく高温消化です。