ダイオキシン分析のクリーンアップ(精製)の違い(硫酸処理・多層シリカゲル・アルミナ・活性炭カラム)
エコまる
ダイオキシンのクリーンアップって、硫酸・シリカゲル・アルミナ・活性炭…何がどう違うの?
クリーンアップ(精製)とは、試料の抽出液から夾雑物(じゃま物)を取り除き、ダイオキシン類だけを残す前処理です。
抽出したばかりの液には油脂や色素などが大量に混じっていて、そのままでは微量のダイオキシン類を正しく測れません。
段階ごとに除く夾雑物の種類が違うので、いくつかの操作を順に通して少しずつ純度を上げていきます。
クリーンアップは夾雑物を「段階的に」除く前処理
ダイオキシン類の分析は、試料から目的物質を取り出す抽出、夾雑物を除くクリーンアップ(精製)、そしてGC-MSでの測定という流れで進みます。
ダイオキシン類はごく微量しか含まれないため、油脂や色素のような夾雑物が残っていると、機器が妨害されて正しい値が出ません。
そこで、性質の違う夾雑物を1つの操作でまとめて落とすのではなく、担当の違う精製操作を順に通して、段階的に純度を上げます。
前の操作で落とし切れない夾雑物を、次の操作が担当する。性質の違う妨害物を順に除いていく。
4つの精製操作で「除くもの」が違う
クリーンアップに使う代表的な操作と、その担当(主な効果)を並べます。
| 精製操作 | 何で分けるか | 主な効果(除く・分けるもの) |
|---|---|---|
| 硫酸処理・硫酸シリカゲル | 酸による分解 | 油脂などの大部分のマトリックスを分解除去し、着色物質・多環芳香族炭化水素・強極性物質を除く。 |
| 多層シリカゲルカラム | 酸性・塩基性・極性の層 | 硫酸・硝酸銀・水酸化カリウムを含ませた層を積み重ね、フェノール類・酸性物質・脂質・含硫黄化合物・脂肪族炭化水素・着色物質などを除く。 |
| アルミナカラム | 極性の差 | 低極性物質・有機塩素化合物を除き、PCBとダイオキシン類を分画する。 |
| 活性炭カラム | 平面構造の吸着 | 平面のPCDDs・PCDFs・コプラナーPCB(DL-PCB)を吸着して保持し、溶媒で分画して回収する。 |
硫酸処理と多層シリカゲルは「油脂や酸性・極性の妨害物を落とす」担当、アルミナと活性炭は「残りからダイオキシン類を分け取る」担当、と分かれます。
なぜ硫酸処理でダイオキシンは壊れないのか
硫酸処理は、強い酸でじゃま物を分解して洗い流す操作です。
このとき油脂や多くの有機物は酸に弱く分解されますが、ダイオキシン類はもともと酸や熱に強い物理化学的な性質をもつため、硫酸では壊れません。
つまり、壊れる夾雑物だけを壊し、残ったダイオキシン類を取り出すという仕組みです。
硫酸シリカゲルは、この硫酸処理をシリカゲルに含ませてカラムの形にしたもので、着色物質などをまとめて止めます。
活性炭カラムが効くのは「平面構造」だから
クリーンアップの最後を担うのが活性炭カラムです。
活性炭の表面に分子が捕まる物理吸着のはたらきで、平面の形をした分子ほど強く吸着されます。
ダイオキシン類は平らな構造で、コプラナーPCB(ダイオキシン様PCB、DL-PCB)も塩素の位置(異性体)によって平面になります。これらは活性炭に強く吸着して残ります。
一方、立体的に曲がったPCBは吸着が弱く先に流れていくため、活性炭カラムは平面のダイオキシン類・コプラナーPCBを分け取るのに重要です。最後に溶媒(トルエンなど)で逆向きに溶出させ、目的の画分を回収します。
平らなダイオキシン類・コプラナーPCBは活性炭に吸着して残り、曲がったPCBは流れていく。
ダイオキシン類特論での問われ方
令和6年度のダイオキシン類特論では、JIS K 0312:2020にもとづく精製操作の名称と主な効果の組合せが問われました。
硫酸処理・シリカゲルは「大部分のマトリックスの分解除去」、アルミナカラムは「低極性物質・有機塩素化合物の除去」、活性炭カラムは「PCDDs・PCDFs・DL-PCBの分離精製」が正しい組合せです。
操作名と効果を入れ替えて正誤を判定させる形が定番なので、各操作が「何を除く・何を分ける担当か」をセットで覚えます。
理解度チェック
クリーンアップ(精製)の目的は何か。
抽出液から夾雑物(じゃま物)を取り除き、ダイオキシン類だけを取り出すことです。油脂や色素が残っていると微量のダイオキシン類を正しく測れません。
硫酸処理でダイオキシン類が分解されないのはなぜか。
ダイオキシン類は酸に強いからです。酸に弱い油脂や有機物(夾雑物)だけが分解され、ダイオキシン類は残ります。
活性炭カラムがダイオキシン類やコプラナーPCBを保持できるのはなぜか。
これらが平面構造で、平らな分子を吸着しやすい活性炭に強く吸着するからです。曲がったPCBは先に流れます。
アルミナカラムの主な役割は何か。
低極性物質・有機塩素化合物を除き、極性の差でPCBとダイオキシン類を分画することです。
まとめ
クリーンアップ(精製)は、抽出液から夾雑物を除いてダイオキシン類だけを取り出す前処理です。
硫酸処理・多層シリカゲルで油脂や酸性・極性の妨害物を、アルミナカラムで低極性物質・有機塩素化合物を、活性炭カラムで平面のダイオキシン類・コプラナーPCBを、それぞれの担当ごとに段階的に分けていきます。「どの操作が何を除く・分けるか」をセットで押さえれば、組合せ問題に対応できます。
参考
- JIS K 0312:2020 工業用水・工場排水中のダイオキシン類の測定方法(精製操作の概要・主な効果)
- 環境省 ダイオキシン類測定マニュアル(硫酸処理シリカゲル・多層シリカゲル・活性アルミナ・活性炭カラムによる精製)
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験 ダイオキシン類特論 出題範囲・公式正答(令和6年度 問18 ほか)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
各操作の「効果(何を除く・何を分けるか)」を入れ替える組合せ問題が狙われます。
活性炭カラムは平面のダイオキシン類・コプラナーPCBを吸着して分け取る操作で、低極性物質・有機塩素化合物を除くアルミナカラムと役割を取り違えないようにします。