物理吸着と化学吸着の違い(ファンデルワールス力・化学結合・吸着熱)
エコまる
活性炭の吸着に「物理」と「化学」があるって、何がどう違うの?
物理吸着と化学吸着は、吸着剤の表面に物質がくっつくときのくっつき方の違いです。
物理吸着はファンデルワールス力という弱い力でくっつき、化学吸着は化学結合という強い力でくっつきます。
大気有害物質特論やダイオキシン類特論では、この2つのしくみの違いが正誤問題で問われます。
物理吸着と化学吸着は「くっつく力」で分かれる
吸着には2つのタイプがあり、見分ける鍵はくっつける力の種類です。
物理吸着は、分子どうしがゆるく引き合うファンデルワールス力によるものです。
力が弱いため、物理吸着でついた分子は比較的かんたんに表面から離れます(可逆的)。温度を上げたり圧力を下げたりすると脱離します。
一方の化学吸着は、表面の原子と被吸着物質が電子をやりとりして結びつく化学結合によるものです。
結合が強いため、化学吸着でついた分子は離れにくく(不可逆的)、もとに戻すには大きなエネルギーが要ります。
活性炭などの吸着剤で気体を取り除く操作をガス吸着といい、ここで主役になるのは弱い力でつく物理吸着です。
同じく気体を取り除く方法でも、液に溶かし込むガス吸収は別のしくみで、表面にくっつける吸着とは区別します。
物理吸着は弱い力でゆるくつくので離れやすい。化学吸着は化学結合でしっかりつくので離れにくい。
物理吸着と化学吸着のちがいを項目で比べる
主な項目を並べて対比します。
| 項目 | 物理吸着 | 化学吸着 |
|---|---|---|
| くっつく力 | ファンデルワールス力(弱い) | 化学結合(強い) |
| 吸着熱 | 20〜30 kJ/mol 程度(小さい) | 80〜400 kJ/mol 程度(大きい) |
| 脱離のしやすさ | 離れやすい(可逆的) | 離れにくい(不可逆的) |
| 吸着の層 | 多分子層になりうる | 単分子層でとまる |
| 温度 | 低温で進みやすい | 活性化エネルギーが要り、高温でも進む |
| 選択性 | 低い(相手を選びにくい) | 高い(特定の相手と結合) |
吸着熱はくっつく力の強さを映します。化学結合でつく化学吸着のほうが、発生する熱が大きくなります。
なぜ吸着は低温が有利なのか
吸着は熱を出す発熱過程です。
熱を出す反応は、温度を下げるほど進む向きにかたよります。
吸着は発熱過程なので、温度が低いほど吸着が進みやすく有利です。
これは物理吸着でとくにはっきり表れ、温度を上げると脱離(脱着)が進みます。
化学吸着は化学結合をつくるために活性化エネルギーを要するので、ある程度の温度が必要なこともあります。
大気有害物質特論・ダイオキシン類特論での問われ方
吸着の力の種類や、温度との関係を入れ替える正誤問題が定番です。
令和5年度の大気有害物質特論 問4では、シリカゲルの吸着力がファンデルワールス力によること、吸着剤表面での化学反応を伴う吸着を化学吸着と呼ぶことが問われました。
令和7年度のダイオキシン類特論 問6では、ファンデルワールス力などの比較的弱い力による吸着を物理吸着と呼ぶ、と整理されています。
令和3年度や令和4年度のダイオキシン類特論では、「吸着は吸熱反応なので高温が有利」とする記述が誤りとして出されました。吸着は発熱過程で、低温が有利です。
ダイオキシン類は疎水性が著しく強いため、疎水性の活性炭の表面に物理吸着しやすい、という形でも問われます。
理解度チェック
物理吸着で分子をくっつけている力は何か。
ファンデルワールス力です。弱い力なので、物理吸着でついた分子は離れやすい(可逆的)です。化学吸着は化学結合で、離れにくくなります。
吸着は発熱過程か吸熱過程か。また、低温と高温のどちらが有利か。
発熱過程で、低温が有利です。「吸熱だから高温が有利」とする記述は誤りです。
化学吸着の吸着層は、単分子層と多分子層のどちらでとまるか。
単分子層です。表面と化学結合した一層で吸着が終わります。物理吸着は弱い力なので、その上にさらに重なる多分子層になりえます。
まとめ
物理吸着はファンデルワールス力(弱い力)で可逆・脱離しやすく、化学吸着は化学結合(強い力)で不可逆・脱離しにくいのが違いです。「吸着は発熱過程なので低温が有利」「物理吸着=弱い力で離れやすい/化学吸着=化学結合で離れにくい」の2点を押さえれば、吸着のしくみを問う問題は取りきれます。
参考
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験(大気有害物質特論 令和5年問4/ダイオキシン類特論 令和3・4・7年)・公式正答
- 一般社団法人 日本粉体工学会 粉体工学用語辞典「化学吸着」「物理吸着」(吸着熱・化学結合/ファンデルワールス力・単分子層/多分子層)
- 物理吸着・化学吸着の標準的事項(吸着の可逆性・発熱過程・活性化エネルギー)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
「発熱か吸熱か」「弱い力か化学結合か」が狙われます。
吸着は発熱過程なので低温が有利で、「吸熱反応だから高温が有利」は誤りです。また物理吸着はファンデルワールス力で離れやすく、化学吸着は化学結合で離れにくい、を逆にしないでください。