排煙脱硫の方式の違い(石灰石膏法・水酸化マグネシウム法・乾式活性炭法・半乾式スプレードライ吸収法)
エコまる
排煙脱硫って石灰石膏法のほかにもいろいろあるけど、何がどう違うの?
排ガス中の硫黄酸化物(SOx・主にSO₂)を取り除く排煙脱硫には、いくつもの方式があります。
もっとも広く使われるのは湿式の石灰石膏法(石灰スラリー吸収法)ですが、ほかに水酸化マグネシウム法・乾式の活性炭法・半乾式のスプレードライ法があります。
大気特論では、各方式の吸収剤・副生物・排水の出方を入れ替えた正誤問題が問われます。
排煙脱硫の方式は「湿式・半乾式・乾式」で分かれる
方式はたくさんありますが、水(吸収液)をどれだけ使うかで見ると3系統に整理できます。
1つ目は湿式です。吸収液にSO₂をガス吸収させて反応させる方式で、石灰石膏法と水酸化マグネシウム法がこれにあたります。
2つ目は半乾式です。吸収剤のスラリーを噴霧し、その水分を蒸発させながらSO₂を吸収する方式で、スプレードライ法が代表です。
3つ目は乾式です。水をほとんど使わず、活性炭などにSO₂を吸着させて除く方式で、活性炭法が代表です。
大きな分かれ目は排水が出るかどうかです。湿式は吸収液を循環させるため排水処理が必要で、半乾式と乾式は排水が出にくいという違いがあります。
水をたくさん使う湿式は排水処理が要り、半乾式・乾式は排水が出にくい。湿式の中に石灰石膏法と水酸化マグネシウム法の2方式がある。
湿式の2方式はどう違うか(石灰石膏法と水酸化マグネシウム法)
湿式には、吸収剤がちがう2つの代表方式があります。
石灰石膏法(石灰スラリー吸収法)は、石灰石(炭酸カルシウム)や消石灰をといたスラリーでSO₂を吸収し、副生物として石こうを回収します。回収した石こうは建材などに再利用でき、これが排煙脱硫でもっとも普及した方式です。
吸収剤の石灰石と消石灰では、SO₂との反応速度は消石灰のほうが大きく、石灰石は安価だが反応はやや遅い、という役割の違いがあります。
もう1つの水酸化マグネシウムスラリー吸収法は、水酸化マグネシウムのスラリーでSO₂を吸収し、最終的に硫酸マグネシウムにして海へ放流します。
硫酸マグネシウムは水に溶けやすいため、装置に結晶が固まるスケーリングが起きにくいのが長所です。一方で吸収剤のマグネシウム源は石灰石より高価で、運転費はむしろ石灰石膏法より高くつきます。
同じ湿式でも、石灰石膏法は石こうを回収して再利用、水酸化マグネシウム法は硫酸マグネシウムを放流、という出口の違いで覚えると区別しやすくなります。
乾式活性炭法と半乾式スプレードライ法の違い
水をあまり使わない側の2方式も、しくみと出てくるものが別です。
乾式の活性炭法は、活性炭や活性コークスにSO₂を吸着させて除きます。吸着した活性炭を350℃以上に加熱して再生し、そのとき出るSO₂を硫酸として取り出します(方式によっては単体硫黄も回収します)。
活性炭法は水を使わないため排水が出にくく、さらにNOxもアンモニアと触媒作用で同時に処理できる方式があります(同時脱硫・脱硝)。
半乾式のスプレードライ法は、消石灰のスラリーをスプレードライヤー内に噴霧し、水分を蒸発させながらSO₂を吸収します。
反応してできた塩は乾いた粉体として回収され、廃棄物として処理します。湿式のような大量の排水処理が要らない点が長所です。
排ガスを冷やしきらずに処理できる乾式・半乾式は、排ガスが露点近くまで下がって起きる低温腐食の心配も小さくなります。なお、燃焼中に石灰石を入れて炉の中で脱硫する流動層燃焼の炉内脱硫も、排ガスを湿らせない脱硫のひとつです。
4方式の比較
4つの方式を、吸収剤・副生物・排水・位置づけで並べます。
| 方式 | 乾湿の別 | 吸収剤・除去のしかた | 副生物・排水 |
|---|---|---|---|
| 石灰石膏法 (石灰スラリー吸収法) |
湿式 | 石灰石・消石灰のスラリーでSO₂を吸収。もっとも普及。 | 石こうを回収・再利用。排水処理が必要。 |
| 水酸化マグネシウム法 | 湿式 | 水酸化マグネシウムのスラリーで吸収。スケーリングしにくい。薬剤費が高い。 | 硫酸マグネシウムにして海へ放流。 |
| 活性炭法 | 乾式 | 活性炭・活性コークスに吸着→加熱再生。同時脱硝もできる。 | 硫酸(や単体硫黄)として回収。排水が出にくい。 |
| スプレードライ法 | 半乾式 | 消石灰スラリーを噴霧し、乾かしながら吸収。 | 乾いた粉体として回収・廃棄。排水処理がほぼ不要。 |
大まかには、湿式は除去率が高く副生物の石こうを売れる反面で排水処理が要り、乾式・半乾式は排水が出にくい代わりに副生物が廃棄物になりやすい、という設備とコストのトレードオフです。
大気特論での問われ方
各方式の吸収剤・副生物・運転費を入れ替える正誤問題が定番です。
令和7年度 大気特論 問8では、排煙脱硫プロセスと吸収剤・副生物の組合せが問われ、活性炭を使う方式の副生物を「硫黄(単体)」だけとする記述が誤りでした。正しくは硫酸として回収されます。
令和6年度 大気特論 問8では、石灰スラリー吸収法でSO₂との反応速度を「石灰石>消石灰」とする記述が誤りでした。実際は消石灰のほうが速く、大小が逆です。
令和6年度 大気特論 問9では、水酸化マグネシウムスラリー吸収法を「石灰スラリー法より運転費が安い」とする記述が誤りでした。薬剤費がかさみ、運転費はむしろ高くなります。
令和5年度 大気特論 問8では、湿式排煙脱硫の副生物に硫化カルシウムを挙げた記述が誤りでした。回収されるのは石こう(硫酸カルシウム)で、硫化物ではありません。
理解度チェック
排煙脱硫でもっとも広く使われ、副生物に石こうを回収する方式は何か。
湿式の石灰石膏法(石灰スラリー吸収法)です。石灰石や消石灰のスラリーでSO₂を吸収し、石こうを回収して建材などに再利用します。
水酸化マグネシウム法と石灰石膏法では、運転費はどちらが安いか。
石灰石膏法のほうが安くなります。安価な石灰石を使えるためで、水酸化マグネシウム法は薬剤費がかさみ運転費は高くなります。
乾式の活性炭法で回収される副生物は、硫黄(単体)か硫酸か。
硫酸です。吸着したSO₂を加熱して回収し、硫酸として取り出します(方式によっては単体硫黄も)。試験では「硫黄(単体)だけ」とする組合せが誤りとされました。
湿式と、乾式・半乾式では、排水の出方はどう違うか。
湿式(石灰石膏法・水酸化マグネシウム法)は吸収液を使うため排水処理が必要です。乾式の活性炭法と半乾式のスプレードライ法は水をほとんど使わず、排水が出にくいのがちがいです。
まとめ
排煙脱硫の方式は、水をどれだけ使うかで湿式(石灰石膏法・水酸化マグネシウム法)・半乾式(スプレードライ法)・乾式(活性炭法)に分かれます。
湿式の石灰石膏法は石こうを回収できて最普及、水酸化マグネシウム法は硫酸マグネシウムを放流し運転費は高め、乾式の活性炭法は硫酸を回収して排水が出にくく同時脱硝もでき、半乾式のスプレードライ法は消石灰スラリーを噴霧して排水処理をほぼなくす、と出口で押さえれば組合せ問題でも取り違えません。
参考
- 国立環境研究所 環境展望台「排煙脱硫技術」(湿式石灰-石膏法/水酸化マグネシウム法/半乾式スプレードライ法/乾式活性炭吸着法の原理・副生物・排水)
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験(大気特論 令和7年問8・令和6年問8/問9・令和5年問8)・公式正答
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
方式名・吸収剤・副生物・運転費・乾湿の別を入れ替えた組合せが狙われます。
水酸化マグネシウム法は石灰石膏法より運転費が安いのではなく、薬剤費がかさみむしろ高くつきます。また乾式の活性炭法の副生物は硫黄(単体)だけではなく、硫酸として回収されます。