サイクロン(遠心力集じん装置)の原理(分離限界径・圧力損失・ブローダウン)
エコまる
サイクロンって、ぐるぐる回すだけでどうやって粉を取ってるの?
サイクロン(遠心力集じん装置)は、排ガスを円筒の中で旋回させ、遠心力で粒子を外壁へ飛ばして落とし、捕集する装置です。
煙に含まれるすすや粉じん(ダスト)を、可動部のない単純な構造でとらえられるため、広く使われます。
ばいじん・粉じん特論では、旋回流のしくみ・分離限界径・圧力損失・ブローダウンが、計算と正誤問題の両方で問われます。
サイクロンの原理(旋回流の遠心力で壁へ飛ばす)
排ガスは円筒の上部に接線方向から吹き込まれ、円筒から円錐へとらせんを描いて下降します。
このとき重い粒子には遠心力がはたらき、外側の壁へ押しやられます。
壁に達した粒子は気流から外れ、壁づたいに下のホッパー(ダスト受け)へ落ちてたまります。
粒子を失って軽くなったガスは、中心で向きを変えて上昇し、上部の出口から清浄ガスとして抜けていきます。
旋回流は二層に分かれます。外側は外周ほど速度が遅くなる自由渦、中心の渦芯(うずしん)付近は流体がまとまって回る強制渦に近い運動です。
外側は旋回しながら下降してダストを壁へ飛ばし、中心は反転して上昇し清浄ガスが抜ける。たまったダストの巻き上げを防ぐため、ホッパー側から一部のガスを引き抜くのがブローダウン。
可動部がなく構造が単純なので、安価で丈夫、高温や高濃度の排ガスにも耐えます。
その代わり、ごく細かい粒子は遠心力が足りずに気流へ残るため、集じん率は中くらいです。
そこで、数ある集じん装置のなかでは、バグフィルターや電気集じん装置の前段で粗い粒子を先に落とす前処理(プレクリーナー)として置かれることが多くなります。
分離限界径とは(50%を捕集できる粒径)
分離限界径(分離限界粒子径)とは、その粒径の粒子をちょうど50%の割合で捕集できる粒径のことです。
これより大きい粒子はほとんど捕まり、これより小さい粒子は気流に乗って逃げやすい、という境目の目安になります。
分離限界径は、運転条件と装置の大きさで変わります。
入口流速が大きいほど、また本体(円筒)の径が小さいほど、遠心力が強くはたらくため、分離限界径は小さくなります。
つまり、流速を上げ、径を絞るほど、より細かい粒子まで捕れるようになります。
ただし、流速を上げると圧力損失(ガスを通す抵抗=送風機の負担)が増えます。
圧力損失は入口ガス流速の2乗に比例するため、流速を上げた分よりも抵抗の増え方が急になります。
細かい粒子まで捕る性能と、圧力損失(送風動力)は引き換えの関係にあります。
流速を上げ径を絞れば細かい粒子まで捕れるが、その分だけ圧力損失が増える。圧力損失は入口流速の2乗で効くので増え方が急。
ブローダウンとは(再飛散を防いで効率を上げる)
ブローダウンとは、ダスト排出部(ホッパー側)から、入口流量の一部にあたるガスを引き抜く操作です。
抜き出す量は、入口流量に対して5〜20%程度が目安です。
ねらいは、いったんホッパーへ落ちたダストが上昇流に巻き込まれて再び舞い上がる再飛散を防ぐことです。
ガスを少し引き抜くと、ホッパー付近の乱れがおさまり、壁ぎわの下降流が強まって、落ちたダストが安定してたまります。
その結果、分離限界径が小さくなり、集じん率が上がります。
引き抜いたガスにも粒子は含まれるため、ブローダウンしたガスは別の集じん装置で受けて処理します。
ほかの集じん方式との違い
サイクロンの位置づけは、原理と得意な粒径、圧力損失でほかの方式と比べると見えてきます。
| 方式 | 分離の原理 | 得意な粒子 | 圧力損失 |
|---|---|---|---|
| 重力集じん(重力沈降室) | 重力で沈める | 粗い粒子 | 小さい |
| サイクロン(遠心力集じん) | 旋回流の遠心力 | やや粗い〜中くらい | 中くらい |
| 洗浄集じん(スクラバー) | 水(液)に捕集 | 中くらい〜細かい | 方式により大きい |
| ろ過集じん(バグフィルター) | ろ布でこし取る | 細かい粒子 | 大きい |
| 電気集じん装置 | 帯電させ電極へ | 細かい粒子 | 小さい |
サイクロンは、粗い〜中くらいの粒子を低コストで落とす役回りで、細かい粒子の仕上げは不得手です。
細かい粒子まで高効率でとらえたいときは、粒子を帯電(荷電)させて集める電気集じん装置や、ろ布でこし取るバグフィルターが受け持ちます。
そのため実際の設備では、サイクロンで粗い粒子を先に落とし、後段のバグフィルターや電気集じん装置で細かい粒子を仕上げる組み合わせがよく使われます。
ばいじん・粉じん特論での問われ方
サイクロンは、計算問題と正誤問題の両方で繰り返し出題されます。
令和7年度 ばいじん・粉じん特論 問4では、回転半径と円周方向速度から遠心効果(遠心力が重力の何倍かを表す無次元の値)を求めさせました。円周速度の2乗を、回転半径と重力加速度の積で割って求めます。
令和6年度 ばいじん・粉じん特論 問4では、渦芯の旋回運動を「半自由渦」とする記述が誤りでした。中心の渦芯は強制渦に近い運動で、外周の自由渦と取り違えさせる引っかけです。圧力損失が入口流速の2乗に比例すること、入口流速の目安が7〜20 m/sであることも、この問題で問われています。
令和7年度 ばいじん・粉じん特論 問2では、各種集じん装置の圧力損失を比べさせ、サイクロンは中程度に位置づけられました(最も大きいのはベンチュリスクラバー)。
理解度チェック
サイクロンの分離限界径とは、どんな粒径のことか。
その粒径の粒子を50%の割合で捕集できる粒径です。これより大きい粒子はほぼ捕まり、小さい粒子は逃げやすくなります。
入口流速を大きくすると、分離限界径と圧力損失はそれぞれどうなるか。
分離限界径は小さくなり(細かい粒子まで捕れる)、圧力損失は大きくなります。圧力損失は入口流速の2乗に比例します。
ブローダウンは何のために、どこからガスを引き抜くのか。
ダスト排出部(ホッパー側)から一部のガスを引き抜きます。落ちたダストの再飛散を防いで集じん率を高めるためです。
サイクロンの旋回流で、中心の渦芯は自由渦と強制渦のどちらに近いか。
強制渦に近い運動です。外周側が自由渦で、中心の渦芯を自由渦・半自由渦とするのは誤りです。
まとめ
サイクロンは、旋回流の遠心力で粒子を外壁へ飛ばし、壁づたいに落として捕集する装置です。構造が単純で安価、粗い粒子に強い一方、細かい粒子は苦手で集じん率は中くらいです。
分離限界径は50%を捕集できる粒径で、入口流速が大きく本体径が小さいほど小さくなり小粒子まで捕れますが、圧力損失は入口流速の2乗で増えます。ブローダウンは再飛散を防いで効率を上げる手立てです。
参考
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験 ばいじん・粉じん特論(令和7年問2・問4、令和6年問4)・公式正答
- 一般社団法人 日本粉体工業技術協会 粉体工学用語辞典「ブローダウン」(サイクロン下部の粗粉捕集箱から入口流量の5〜20%のガスを抜き出す操作)
- サイクロン(遠心力集じん)の分離限界粒子径・圧力損失の標準的事項(圧力損失は入口流速の2乗に比例)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
旋回流の渦の呼び方と、性能と圧力損失の関係が狙われます。
旋回流は外側が自由渦・中心の渦芯が強制渦で、渦芯を自由渦や半自由渦とするのは誤りです。また入口流速を上げ径を小さくすると小粒子まで捕れますが、その分だけ圧力損失が増えます(性能と圧損は引き換え)。