大腸菌群と大腸菌・ふん便性大腸菌群の違い(水質指標・検査と基準)
エコまる
大腸菌群と大腸菌、ふん便性大腸菌群って、どこがどう違うの?
名前が似た3つですが、指す範囲がそれぞれ違います。
水質では、ふん便(し尿)で汚れていないかを見る指標としてこれらの菌を測ります。
まず広い順に、大腸菌群 > ふん便性大腸菌群 > 大腸菌、という入れ子の関係を押さえます。
大腸菌群とは(ふん便汚染の指標)
大腸菌群とは、乳糖を分解して酸とガスを出す、グラム陰性・無芽胞の桿菌の総称です。
好気性または通性嫌気性の細菌で、この性質を持つものをまとめて1つの群として扱います。
大腸菌群は、ふん便とともに腸から出てくるため、水がふん便で汚染されていないかを見る指標に使われます。
ただし、大腸菌群には土壌や植物など自然環境にいる菌も含まれます。
そのため、大腸菌群が検出されても、それがそのままふん便汚染とは限らない、という弱点があります。
大腸菌群・ふん便性大腸菌群・大腸菌の違い
3つは、外側から内側へ範囲がしぼられていく入れ子の関係です。
大腸菌群の中にふん便性大腸菌群があり、その中に大腸菌がある。内側にしぼるほど、ふん便で汚れているという確かさが上がる。
ふん便性大腸菌群は、大腸菌群のうち、より高い温度でも増える菌の集まりです。
培養温度を44.5℃まで上げると、自然環境の菌は脱落し、腸由来の菌が残りやすくなります。
このしぼり込みで、大腸菌群よりふん便由来に近い群になります。
大腸菌(E. coli)は、そのふん便性大腸菌群の中の特定の種です。
大腸菌は腸の中に多くいて環境中ではあまり増えないため、ふん便汚染を最も確実に示します。
3つの違いを表で並べます。
| 観点 | 大腸菌群 | ふん便性大腸菌群 | 大腸菌(E. coli) |
|---|---|---|---|
| 位置づけ | 乳糖を分解し酸とガスを出すグラム陰性桿菌の総称 | 大腸菌群のうち高温で増える群 | ふん便性大腸菌群の中の特定の種 |
| 含まれる菌 | 腸由来+自然環境の菌 | 腸由来に近い菌 | 腸由来の菌 |
| 判別の目安 | 35℃前後で培養 | 44.5℃で培養 | 酵素の反応で判別 |
| ふん便汚染の指標 | 外側(大腸菌群)ほどゆるく、内側(大腸菌)ほど確実 | ||
大腸菌は、ふん便汚染を見るうえで一番たしかな指標になります。
なぜ環境基準は「大腸菌群数」から「大腸菌数」へ変わったのか
水のよごれを測る生活環境項目の環境基準では、長く大腸菌群数が使われてきました。
ところが、大腸菌群数は自然環境の菌まで数えてしまうため、ふん便汚染を的確に表せないという問題がありました。
その後、大腸菌だけを簡単に培養して数える方法が確立しました。
そこで、生活環境項目では大腸菌群数を削除し、新たに大腸菌数を追加しました(令和4年4月1日施行)。
大腸菌群数に代えて大腸菌数であり、両方を併用するのではありません。
同じ見直しは排水基準でも行われ、排水基準でも大腸菌群数から大腸菌数(許容限度800CFU/mL)へ改められました(令和7年4月1日施行)。
検査のしかた
大腸菌の数は、CFU(コロニー形成単位=Colony Forming Unit)という単位で表します。
従来の大腸菌群数では、試料を薄めて培養し陽性の本数から数を推定する最確数法(MPN)や、選択培地(デソキシコール酸塩培地など)が使われてきました。
大腸菌数では、菌が出す酵素に反応する特定酵素基質培地法で、短時間に判定します。
同じ仲間のBOD・CODが酸素消費量で有機汚濁を測るのに対し、大腸菌群・大腸菌は菌を培養して数を数える点が違います。
水質概論での問われ方
大腸菌群・大腸菌は、指標としての的確さ・改正の中身・評価方法の形で問われます。
令和5年度 水質概論 問7では、生活環境項目で大腸菌群数に「加えて」大腸菌数が追加された、とする記述が誤りでした。正しくは「代えて(置き換え)」です。同じ問では、大腸菌数は大腸菌群数より的確なふん便汚染の指標であること、自然環境保全を利用目的とする場合の基準値が20CFU/100mL以下であることが正しい記述として登場しました。
令和6年度 水質概論 問1では、河川の生活環境基準で90%水質値により評価するのは大腸菌数であり、「一般細菌数」とするのが誤りでした(一般細菌は水道水質の項目です)。
「大腸菌群数→大腸菌数は置き換え」「河川の大腸菌数は90%水質値」を押さえると、年度が変わっても対応できます。
理解度チェック
大腸菌群・ふん便性大腸菌群・大腸菌のうち、ふん便汚染を最も確実に示すのはどれか。
答え:大腸菌(E. coli)
大腸菌群が一番広く(自然環境の菌も含む)、ふん便性大腸菌群、大腸菌の順に範囲がしぼられ、内側ほど指標として確実になります。
生活環境項目の環境基準で、大腸菌群数は大腸菌数に「加えて」追加されたか。
答え:いいえ(代えて=置き換え)
大腸菌群数を削除し、大腸菌数を追加しました(令和4年4月1日施行)。両方を併用するのではありません。令和5年度 水質概論 問7の引っかけでした。
ふん便性大腸菌群を、大腸菌群からしぼり込むときの目安となる培養温度は何℃か。
答え:44.5℃
この高温で自然環境の菌が脱落し、腸由来の菌が残りやすくなります。これがふん便性大腸菌群です。
まとめ
大腸菌群・ふん便性大腸菌群・大腸菌は、外側から内側へ範囲がしぼられる入れ子の関係です。
大腸菌群は乳糖を分解し酸とガスを出すグラム陰性菌の総称で自然環境の菌も含み、ふん便性大腸菌群は44.5℃で増える糞便由来寄りの群、大腸菌は最も確実なふん便汚染の指標です。
環境基準・排水基準とも、大腸菌群数から大腸菌数へ置き換えられました。試験では「置き換えか追加か」と「河川は90%水質値」が繰り返し問われます。
参考
- 環境省「水質汚濁に係る環境基準の見直しについて」(生活環境項目で大腸菌群数を削除し大腸菌数を追加。令和4年4月1日施行)
- 環境省「水質汚濁防止法施行規則等の一部を改正する省令」(排水基準の大腸菌群数を大腸菌数800CFU/mLへ改正。令和7年4月1日施行)
- 大腸菌群・ふん便性大腸菌群・大腸菌の定義(乳糖分解・酸とガス産生のグラム陰性無芽胞桿菌/44.5℃で発育するふん便性大腸菌群)
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験(水質概論 令和5年問7・令和6年問1)・公式正答
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
改正の中身が狙われます。
大腸菌群数に「代えて」大腸菌数が採用されたのが正しく、「加えて(両方併用)」とするのは誤りでした(令和5年度 水質概論 問7)。置き換えか追加かの取り違えに注意します。