吸音率と吸音材料(多孔質・背後空気層・共鳴器型)|遮音との違い
エコまる
吸音と遮音って何が違うの?多孔質とか共鳴器型とか、種類も多くて混乱する。
吸音率は、材料に入った音のうち、跳ね返ってこなかった割合です。
値は0〜1で表し、1に近いほど音をよく吸います。入射した音のエネルギーから反射した分を引き、入射エネルギーで割って求めます(=1−反射率)。
騒音・振動概論では、吸音率の意味と、多孔質・共鳴器型といった吸音材料の特性、そして音を通さない遮音との違いが正誤問題で問われます。
吸音率とは(反射されなかった割合)
吸音率は、材料に当たった音の強さを基準に、反射されずに残った割合で表します。
吸音率とは、入射した音のうち反射されなかった割合(材料に吸収された分と、材料を透過した分の合計)で、0〜1の値をとります。
反射されなかった音は、材料の中で熱に変わる(吸収)か、材料を通り抜ける(透過)かのどちらかです。どちらも反射音は減るので、吸音率には吸収と透過の両方が含まれます。
反射の起こりやすさそのものは、境界の両側の音響インピーダンス(密度×音速)の差で決まる反射率で決まります。吸音率は、その反射率を1から引いた値にあたります。
吸音率は音の入射角によっても変わります。垂直に入る場合と斜めに入る場合では値が違い、「入射角によらず同じ」ではありません。
令和3年度の騒音・振動概論では、吸音率を「反射率の逆数で求められる」とする記述が誤りでした。正しくは1から反射率を引いた値です。同じ問題で「吸音率は入射角により異なる」「吸音率が大きいほど残響時間は短い」は正しい記述でした。
多孔質材料は高音域に効く(背後空気層で低音域を補う)
吸音材料の代表が、グラスウールやロックウールのような多孔質材料です。
多孔質材料は、細かいすき間に入った空気が振動し、繊維との摩擦で音のエネルギーが熱に変わって吸音します。
多孔質材料は高音域(中・高音)で吸音率が大きく、低音域は苦手です。
低音域も吸いたいときは、材料を厚くするか、材料と壁の間に空気層(背後空気層)を設けます。厚くするほど、また空気層を厚くするほど、低音域の吸音率が上がります。
薄い多孔質材料でも、背後空気層をうまくとれば低音まで吸えます。壁に垂直に入る音では、空気層の厚さが波長の約4分の1のときに吸音率が最大になります。
令和2年度の騒音・振動概論では、多孔質材料について「高音域で吸音率が大きい」「厚さを増すと吸音率が増加する」「剛壁との間に空気層を置くと低音域での吸音率が増加する」が、いずれも正しい記述として出ました。
令和元年度の騒音・振動概論では、波長に比べて十分薄い多孔質材料で630Hzの音を吸う場合、最大の吸音率が得られる背後空気層の厚さが約135mm(波長の約4分の1)と問われました。
多孔質材料は高音域で吸音率が大きい。背後に空気層を設けると、低音域(左側)の吸音率が上がる。
共鳴器型は特定の周波数を吸う(穴あき板+背後空気層)
もう一つの代表が、穴あき板(有孔板)と背後空気層を組み合わせた共鳴器型です。
穴あき板の背後に空気層と剛壁を設けると、孔の中の空気が「おもり」、背後空気層が「ばね」のように働き、ある周波数で共鳴します。
共鳴周波数の付近では、孔の空気が激しく振動し、まわりとの摩擦で音が熱に変わります。そのため共鳴器型は、特定の周波数(共鳴周波数)で吸音率がピークになります。
共鳴周波数は、板の厚さ・孔の大きさ・開口率・背後空気層の厚さで変わります。多孔質が苦手な低音域をねらって吸うのに向きます。
令和3年度の騒音・振動概論では、円孔を等間隔に並べた穴あき板の背後に空気層と剛壁を設けた吸音構造で、固有周波数(共鳴周波数)を低い側へ動かす構造変更が問われました。背後空気層を厚くすると、共鳴周波数は低くなります。
共鳴器型は共鳴周波数の付近で吸音率がピークになる。板厚・孔径・開口率・背後空気層の厚さでピークの位置が変わる。
吸音と遮音は別物
吸音とよく混同されるのが遮音です。狙いも材料も逆向きです。
吸音は反射音を減らすこと(音を吸う・通す)、遮音は音を透過させないこと(音を通さない・跳ね返す)です。
吸音は、グラスウールのような軽い多孔質材料で行います。室内の反射音や響きを抑えるのが狙いです。
遮音は、鉄板・コンクリート・石膏ボードのような重い材料で行います。隣の部屋へ音を伝えないのが狙いです。
遮音の効きは音響透過損失(dB)で表し、面密度(単位面積あたりの質量)が大きいほど大きくなります。これを質量則といいます。
| 項目 | 吸音 | 遮音 |
|---|---|---|
| 狙い | 反射音を減らす(室内の響きを抑える) | 音を透過させない(隣へ伝えない) |
| 音への働き | 音を吸って熱に変える・通す | 音を跳ね返す・通さない |
| 主な材料 | 軽い多孔質(グラスウール・ロックウール・ウレタン) | 重い材料(鉄板・コンクリート・石膏ボード) |
| 効きを表す値 | 吸音率(0〜1、大きいほど良い) | 音響透過損失(dB、大きいほど良い) |
| 周波数の傾向 | 多孔質は高音域に効く | 質量則で面密度が大きいほど、また高音ほど損失が大きい |
軽い多孔質材料は音を吸いますが、ほとんど通してしまうので遮音には向きません。重い壁は音を跳ね返しますが、反射音は減らせないので吸音には向きません。役割が違います。
令和2年度の騒音・振動概論では、遮音材料の用途として「反射音を低減するための内壁の材料」を挙げる記述が誤りでした。反射音を抑えるのは吸音材料の役目です。
令和元年度の騒音・振動概論では、吸音材料と遮音材料の特性を並べ、「吸音率は材料に対する音の入射角によらず同じである」を誤りとする問題が出ました。
理解度チェック
多孔質材料が得意なのは高音域・低音域のどちらか。低音域も吸うにはどうするか。
高音域が得意です。低音域も吸いたいときは、材料を厚くするか、材料の背後に空気層を設けます。
穴あき板+背後空気層の共鳴器型は、どんな周波数を吸うか。
特定の周波数(共鳴周波数)で吸音率がピークになります。多孔質が苦手な低音域をねらえます。
吸音率は反射率からどう求めるか。値の範囲は。
1−反射率です。反射率の逆数ではありません。値は0〜1です。
室内の反射音を抑えたいとき、吸音材料と遮音材料のどちらを使うか。
吸音材料(多孔質)です。遮音材料は、音を透過させない用途に使います。
まとめ
吸音率は入射音のうち反射されなかった割合(1−反射率・0〜1)です。多孔質材料は高音域に効き、背後に空気層を設けると低音域が改善し、共鳴器型(穴あき板+背後空気層)は特定の周波数を吸います。音を通さない遮音(重い材料・質量則)とは別物です。
「吸音は反射を減らす・軽い多孔質、遮音は通さない・重い材料」と分けて押さえれば、騒音・振動概論の吸音と遮音の問題で迷いません。
参考
- 吸音率の定義(α=(Ii−Ir)/Ii=1−反射率、0〜1)・吸音と遮音の違い(吸音=反射を小さく/遮音=透過を小さく・音響透過損失TL)
- 多孔質吸音材料の周波数特性(高音域で吸音率大・厚さ/背後空気層で低音域が増加)、共鳴器型(穴あき板+背後空気層)の共鳴吸音、質量則(面密度が大きいほど透過損失大)
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験 騒音・振動概論 出題範囲・公式正答(令和元年度・令和2年度・令和3年度 ほか)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
「吸音と遮音の取り違え」「吸音率の式」が狙われます。
反射音を減らすのは吸音材料(多孔質)で、重い遮音材料では反射音は減りません。また吸音率は1から反射率を引いた値で、「反射率の逆数」ではありません。