ダイオキシンの高分解能GC/MS(HRGC-HRMS)とは(二重収束・ロックマス・SIM・分解能10000)

エコまる

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ダイオキシンの測定で出てくる「高分解能GC/MS」って、普通のGC/MSと何が違うの?

高分解能GC/MS(HRGC-HRMS)は、ダイオキシン類を測るための分析法で、高分解能ガスクロ(HRGC)と高分解能質量分析計(HRMS)を組み合わせたものです。

ダイオキシン類は、よく似た物質が多数あり、まわりに妨害成分も多いため、ふつうの分析では正しく測れません。

ダイオキシン類特論では、この測定法の用語としくみが正誤問題で問われます。

なぜ普通のGC/MSでは足りないのか

ダイオキシン類の測定が難しいのは、3つの条件が重なるからです。

1つ目は超微量であることです。環境中の濃度はごくわずかで、少量を取りこぼさず測る感度が要ります。

2つ目は異性体が多いことです。塩素の数と位置によって多数の異性体・同族体に枝分かれし、その中で毒性が問題になるのは2,3,7,8位に塩素が付いたものに限られます。

3つ目は妨害成分が多いことです。試料には構造の似た夾雑物が大量に共存し、目的物質と同じくらいの重さに見えるイオンが妨害になります。

そこで、まずキャピラリーカラムのガスクロで毒性の強い異性体を分け、さらに高分解能の質量分析計で同じ重さに見える妨害を質量の差で分ける、二段構えをとります。

二段階で選り分ける 高分解能ガスクロ (HRGC) 毒性の強い異性体を 時間で分ける 高分解能質量分析計 (HRMS) 同じ重さに見える 妨害を質量で分ける

ガスクロで似た異性体を時間で分け、質量分析計で同じ重さに見える妨害を質量で分ける。役割が違う2段を組み合わせる。

HRGC-HRMS のしくみ(要素ごとの役割)

この分析法は、いくつかの要素の組み合わせでできています。

要素はたらき
高分解能ガスクロ(HRGC)キャピラリーカラムを使い、毒性の強い2,3,7,8位置換異性体を他の異性体から分離する。
二重収束形質量分析計(HRMS)電場と磁場を組み合わせて質量分解能を高め(10000以上)、同じ公称質量の妨害イオンを正確な質量の差で分離する。
ロックマス基準となる標準物質のイオンを目印にして、測定中に生じる質量軸のわずかなずれを補正する。
SIM(選択イオン検出)測りたい特定の質量/電荷(m/z)のイオンだけを選んで検出し、微量でも高感度に測る。
内標準(同位体希釈)13Cなどで標識した内標準物質を加え、その回収率で補正しながら定量する。

こうして測定で得た異性体ごとの濃度から、最終的に毒性等量(TEQ)を求めます。

ガスクロの検出器との違い

ガスクロマトグラフの検出器(FID・ECDなど)は、カラムで分離されてきた成分を電気信号としてとらえる部分で、ここで使う質量分析計とは役割が違います。

検出器は信号の大小から成分の量をとらえますが、物質そのものを質量で見分けることはしません。

高分解能質量分析計(HRMS)は、イオンを質量(m/z)で識別し、同じ公称質量の妨害から目的のイオンを分離して検出します。ダイオキシンの測定で「高分解能」を担うのは、この質量分析計です。

項目GCの検出器(FID・ECDなど)高分解能質量分析計(HRMS)
とらえるものカラムから出てきた成分の有無・量を電気信号にする成分のイオンを質量(m/z)で識別する
物質の特定保持時間が頼りで、量はわかるが物質名は直接はわからない正確な質量から物質を見分けられる
ダイオキシン分析での位置づけ一般のガスクロで使う二重収束の高分解能で同定・定量する標準的な装置

ダイオキシン類特論での問われ方

この測定法の用語を入れ替える正誤問題が定番です。

質量分析計(MS)には二重収束方式を用いること、質量分解能は10000以上とすること、イオン検出はロックマス方式によるSIM(選択イオン検出)で行うこと、が正しい記述として問われています。

一方で、GC/MS分析に低分解能の質量分析計を用いるとした記述は誤りで、ダイオキシン類の測定には高分解能の質量分析計が必要です。

まちがえやすいポイント

「高分解能」が何の分解能かが狙われます。

分解能10000以上は質量分析計(MS)の質量分解能で、ガスクロ側の分離のことではありません。低分解能の質量分析計では、同じ重さに見える妨害を分離できません。

理解度チェック

Q.

ダイオキシン類の測定で、質量分析計(MS)に用いる方式は何か。

二重収束方式です。電場と磁場を組み合わせて高い質量分解能を得ます。

Q.

同じ公称質量の妨害イオンから目的のイオンを分けるために、質量分析計に求められる分解能はどれくらいか。

10000以上です。この高い質量分解能で、同じ重さに見える妨害を質量の差で分離します。

Q.

特定の質量(m/z)のイオンだけを選んで高感度に検出する方法を何というか。

SIM(選択イオン検出)です。ロックマスで質量軸のずれを補正しながら行います。

Q.

キャピラリーカラムのガスクロは、何のために使うか。

毒性の強い2,3,7,8位置換異性体を、他の異性体から分離するために使います。

まとめ

高分解能GC/MS(HRGC-HRMS)は、キャピラリーカラムのガスクロで2,3,7,8位異性体を分け、二重収束の高分解能質量分析計で、同じ重さに見える妨害を質量分解能10000以上で分離する分析法です。

ロックマスで質量軸を補正し、SIMで特定イオンだけを高感度に測る、という流れを押さえれば、ダイオキシン類特論の測定の問題に対応できます。

参考

  • 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験(ダイオキシン類関係 令和元〜7年の測定分析の設問)・公式正答
  • 環境省 ダイオキシン類に係る大気環境調査マニュアル(高分解能ガスクロマトグラフ質量分析法・分解能10000以上・ロックマス方式によるSIM)
  • 日本分析機器工業会(JAIMA)二重収束形質量分析計の原理(電場と磁場による高分解能)

この記事を書いた人

公害防止管理者 独学ノート 編集部

公害防止管理者試験の用語・法令・計算を、環境省の告示や過去問に照らして、独学者の目線で整理しています。