ダイオキシン分析の抽出法の違い(ソックスレー抽出・高速溶媒抽出・液液抽出・固相抽出)

エコまる

エコまる

ダイオキシンの抽出法って4つもあるけど、どれをいつ使うの?

抽出は、試料の中のダイオキシン類を溶媒に移し取る操作です。

ダイオキシン類は脂に溶けやすく水に溶けにくいため、有機溶媒を使って試料から引き出します。

どの抽出法を使うかは、試料が固体か水かでほぼ決まります。

そもそも抽出とは何か

分析の流れは、試料採取 → 前処理(抽出・クリーンアップ)→ GC/MS分析、と進みます。

このうち抽出は、ばいじんや排水といった試料の中から、目的のダイオキシン類を溶媒側へ取り出す入口の操作です。

ダイオキシン類が水になじまず有機溶媒に溶けやすいことは、その物理化学的性質に由来します。だからトルエンやジクロロメタンのような有機溶媒で抽出します。

抽出法は4つありますが、試料の形態で使い分けます。固体には固体向きの方法、水には水向きの方法があります。

試料の形態で抽出法を選ぶ 固体試料 ろ過材・吸着剤 ばいじん など ソックスレー抽出 高速溶媒抽出 水試料 排水・ろ液 液体捕集部 など 液液抽出 固相抽出

固体はソックスレー抽出か高速溶媒抽出、水は液液抽出か固相抽出。試料の形態で入口が分かれる。

固体試料の抽出(ソックスレー抽出・高速溶媒抽出)

排ガス試料のろ過材や吸着剤、ばいじんのような固体からダイオキシン類を取り出すときは、固体向きの方法を使います。

ソックスレー抽出は、ソックスレー抽出器で溶媒を繰り返し還流させ、固体に溶媒をしみ込ませて成分を抜き取る標準的な方法です。

溶媒を循環させながらじっくり抜くため、抽出に長い時間がかかり、溶媒も多めに使います。

高速溶媒抽出は、溶媒を高温・高圧のまま固体に通す方法で、加圧流体抽出(ASE)とも呼ばれます。

高い温度と圧力で溶媒の溶かす力を高めるため、ソックスレー抽出より短時間で済み、使う溶媒も少なくなります。

ダイオキシン類特論では、固体からの抽出は「ソックスレー抽出又はこれと同等の抽出方法で行う」と問われます。高速溶媒抽出はこの「同等の方法」にあたる代替法です。

水試料の抽出(液液抽出・固相抽出)

排水やろ液、排ガスの液体捕集部のような水の試料は、固体とは別の2つの方法で抽出します。

液液抽出は、分液ろうとの中で水試料に有機溶媒を加えてよく振り混ぜ、ダイオキシン類を水から有機溶媒の側へ移す方法です。

1回では移しきれないため、同じ操作を3回繰り返して取り切ります。溶媒抽出とも呼びます。

固相抽出は、吸着剤を詰めた固相に試料水を通し、ダイオキシン類を吸着剤に捕まえてから溶媒で溶かし出す方法です。

通す水が多すぎると吸着剤が一杯になって成分が漏れ出します。これを破過といい、通水量に上限を設けて防ぎます。

液液抽出 固相抽出 有機溶媒 振って二層に分け 溶媒側へ移す 吸着剤 通水して捕集し 溶媒で溶出

液液抽出は分液ろうとで水から有機溶媒へ移す。固相抽出は吸着剤に通して捕まえ、あとから溶媒で溶かし出す。

4つの抽出法の比較

対象とする試料と特徴で並べると、使い分けが見えてきます。

抽出法主な対象原理・特徴時間・溶媒量
ソックスレー抽出固体(ろ過材・吸着剤・ばいじん)溶媒を還流させ固体から繰り返し抜き取る標準法。長時間・溶媒多め
高速溶媒抽出(加圧流体抽出・ASE)固体高温・高圧で溶媒の力を高めて抽出。ソックスレーと同等の代替法。短時間・溶媒少なめ
液液抽出(溶媒抽出)水(排水・ろ液・液体捕集部)分液ろうとで有機溶媒へ移す。操作を繰り返す。溶媒は中程度
固相抽出水(ろ液)吸着剤に通して捕集し、溶媒で溶出。破過に注意。溶媒少なめ

ソックスレー抽出と高速溶媒抽出はどちらも固体向きで、違いは時間と溶媒量です。液液抽出と固相抽出はどちらも水向きで、水から溶媒へ移すか、吸着剤に捕まえるかが違います。

まちがえやすいポイント

試料の形態と抽出法の組み合わせが狙われます。

ソックスレー抽出と高速溶媒抽出は固体向き、液液抽出と固相抽出は水向きで、固体と水を取り違えると誤りです。また高速溶媒抽出・加圧流体抽出・ASEは別物ではなく、すべて同じ方法の呼び名です。

理解度チェック

Q.

排ガス試料のろ過材や吸着剤のような固体からダイオキシン類を抽出するとき、標準とされる方法は何か。

ソックスレー抽出です。これと同等の抽出方法として高速溶媒抽出(加圧流体抽出・ASE)も使えます。

Q.

高速溶媒抽出がソックスレー抽出より優れる点は何か。

高温・高圧で抽出するため短時間で済み、使う溶媒も少ない点です。加圧流体抽出やASEと呼ぶのも同じ方法です。

Q.

排水などの水試料に使う抽出法を2つ挙げよ。

液液抽出固相抽出です。液液抽出は分液ろうとで有機溶媒へ移し、固相抽出は吸着剤に通して捕まえてから溶出します。

Q.

固相抽出で「破過」とは何が起きることか。

通す水が多すぎて吸着剤が一杯になり、成分が漏れ出すことです。防ぐため通水量に上限を設けます。

まとめ

ダイオキシン分析の抽出は、試料が固体ならソックスレー抽出か高速溶媒抽出、水なら液液抽出か固相抽出、という形態での使い分けが軸です。固体側は時間と溶媒量の違い、水側は溶媒へ移すか吸着剤に捕まえるかの違いを押さえれば、抽出法の整理はつきます。

参考

  • 環境省 ダイオキシン類に係る大気環境調査マニュアル(ろ過材・吸着剤の抽出=ソックスレー抽出又はこれと同等の方法)/JIS K0311・K0312
  • 農林水産消費安全技術協会(FAMIC)ダイオキシン類定量法ガイドライン(高速溶媒抽出=高圧液体抽出・高圧流体抽出・加圧流体抽出の別称)
  • 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験 出題範囲・公式正答

この記事を書いた人

公害防止管理者 独学ノート 編集部

公害防止管理者試験の用語・法令・計算を、環境省の告示や過去問に照らして、独学者の目線で整理しています。