検出下限・定量下限・回収率とは(ダイオキシン分析の品質管理)
エコまる
検出下限・定量下限・回収率って、似ているけど何がどう違うの?
検出下限・定量下限・回収率は、ダイオキシン類の分析が正しく行えたかを確かめる、品質管理の指標です。
検出下限は「あるか無いかを判断できる最小量」、定量下限は「数値として信頼できる最小量」、回収率は「加えた物質が最後まで何%残ったか」を表します。
はかる相手がごく微量なため、どこまで測れているかと、操作の途中で失っていないかを、数字で確認します。
検出下限・定量下限・回収率の役割
3つはいずれも、出てきた測定値を信じてよいかを判断するための物差しです。
ダイオキシン類の濃度は毒性等量(TEQ)として基準値と比べるため、その元になる測定値の確からしさが問われます。
まず3つの違いを並べます。
| 指標 | 何を表すか | 役割(何の判断に使うか) |
|---|---|---|
| 検出下限 | そこに対象物質があるか無いかを判断できる最小量。ノイズに埋もれない最小のピーク。 | 「検出された/されなかった」の線引き。 |
| 定量下限 | 数値として信頼できる最小量。検出下限より大きい。 | 「いくつ」と濃度を言ってよい下限の線引き。 |
| 回収率 | あらかじめ加えた内標準物質が、最終の測定までに何%残ったか。 | 採取・前処理で対象物質を失っていないか(操作の妥当性)。 |
検出下限と定量下限は「測れる下限」、回収率は「操作の確かさ」をみる点で役割が分かれます。
検出下限と定量下限はどう違うか
検出下限は、クロマトグラム上でノイズに埋もれずにピークと判断できる最小量です。
目安はノイズ幅の3倍以上のピーク高さ(S/N=3)で、これを満たすピークを「検出された」とします。
定量下限は、検出よりも一段きびしく、濃度として信頼できる最小量です。JIS K 0311では検出下限の10倍と定めています。
つまり検出下限と定量下限の間には、「ピークは見えるが、数値はまだあいまい」という濃度帯があります。
定量下限は検出下限より高い濃度側にある。検出下限を超えても、定量下限に届くまでは「いくつ」と断定しない。
検出下限・定量下限は、見る範囲によって3段階で考えます。
測定装置そのものの感度で決まる「装置の検出下限・定量下限」、前処理を含めた操作全体で決まる「測定方法の検出下限・定量下限」、実際の試料で採取量などを反映した「試料における検出下限・定量下限」です。
試料における値は、採取量によって試料ごとに変わります。
回収率で操作の確かさを確かめる
回収率は、あらかじめ既知量だけ加えた内標準物質が、最終の測定でどれだけ回収できたかの割合です。
標識した物質を加えておき、その回収率が決められた範囲に収まっていれば、採取や前処理の途中で対象物質を大きく失っていないと判断できます。
内標準物質は加える段階で役割が分かれ、回収率の許容範囲も別に決まっています。
採取から抽出までを確かめるサンプリングスパイク用内標準物質は70〜130%、抽出から前処理までを確かめ定量の基準にするクリーンアップスパイク用内標準物質は50〜120%が許容範囲です。
範囲から外れたときは、原因を取り除いて測定をやり直します。
なぜダイオキシン分析でこれらが重視されるか
ダイオキシン類の測定は、ピコグラム(1兆分の1グラム)の水準というごく微量を相手にします。
濃度が低いほど、装置のわずかな汚れや操作のばらつきで測定値がぶれやすく、検出下限・定量下限や回収率を確かめないと値を信用できません。
しかも結果は基準値と直接比べられ、毒性の強い異性体ごとに評価します。検出下限は化合物のまとまり(同族体)ごとに求めます。
だから、測れる限界と操作の確かさを数字で押さえることが、分析結果の信頼性を支えます。
理解度チェック
検出下限と定量下限では、どちらが大きいか。
定量下限です。検出下限より大きく、JIS K 0311では検出下限の10倍と定められています。
ピークを「検出された」とみなすS/N比の目安はいくつか。
S/N=3です。ベースラインのノイズ幅の3倍以上のピーク高さがあるピークを、検出されたものとして扱います。
サンプリングスパイク用内標準物質の回収率の許容範囲は何%か。
70〜130%です。クリーンアップスパイク用は50〜120%で、範囲が異なります。
回収率を確認するのは、何を判断するためか。
採取や前処理の途中で対象物質を失っていないか、つまり操作が妥当だったかを判断するためです。
まとめ
検出下限はあるか無いかを判断できる最小量(S/N=3)、定量下限は数値として信頼できる最小量(検出下限の10倍)、回収率は加えた内標準物質が何%残ったかです。「定量下限は検出下限より大きい」「回収率はサンプリング70〜130%・クリーンアップ50〜120%」を押さえれば、ダイオキシン分析の品質管理の問いに対応できます。
参考
- JIS K 0311:2020 排ガス中のダイオキシン類の測定方法(検出下限・定量下限の定義、S/N=3、内標準物質の回収率)
- 環境省 ダイオキシン類に係る大気環境調査マニュアル(目標検出下限・目標定量下限)
- 一般社団法人 産業環境管理協会 公害防止管理者等国家試験(ダイオキシン類特論)
※ この記事の確認日:2026年6月
まちがえやすいポイント
「検出下限・定量下限の大小」と「回収率の範囲」が狙われます。
定量下限は検出下限より大きく、両者は別物です(検出下限のほうが小さい)。また許容範囲はサンプリングスパイクが70〜130%、クリーンアップスパイクが50〜120%で、入れ替えると誤りです。